第23回日本助産学会 学術集会
スポンサードセミナー 骨盤ケアで改善! PART2

妊娠・分娩・産褥・授乳・新生児期のトラブル

目次

座 長
大阪府立大学看護学部教授 末原 紀美代

座長・演者経歴

演題1 妊産婦・医師から信頼を得るためのキーワード「骨盤ケア」
NPO 法人 母子整体研究会代表理事 渡部 信子

演題2 心寄せ合い安全な分娩を実現
医療法人 玲聖会 貴子ウィメンズクリニック 水谷 紀子

演題3 妊娠初期からの骨盤ケアの実際
お茶畑助産院 高橋 美穂

演題2 心寄せ合い安全な分娩を実現

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助産師長 水谷 紀子

医療法人 玲聖会 貴子ウィメンズクリニック
助産師長 水谷 紀子

1.病院概要

当院は開業して5 年が経過したばかりで、年間分娩件数360。医師は院長である女医1 名で、全ての分娩と毎日80 人を超える外来診察を担当している。助産師は非常勤を含め4 名。看護師13 名。超音波検査技師1名。

2.助産師外来の始まり

院長は一人で昼夜関係なく年間360 件の分娩に立ち会い、外来も毎日休むことなく続けていた。それは想像を絶する大変さであった。院長の状態を目にするたびに私は、私たち助産師ができることを積極的にやらなければ、そのうち院長が倒れ、閉院を余儀なくされるのではないかと危惧していた。

そこで、私は院長に助産師外来の開設を嘆願し、妊婦の保健指導を担当することができた。当然、外来中は院長との連携を保っている。また、経腹エコーは検査技師を専任とした結果、多くの情報を得ることができ(奇形異常等の発見率が著しく向上)、安心感のある精度の高い外来活動が実現した。助産師外来と経腹エコーの専任者の確立により、院長の負担を軽減することができただけでなく、妊婦と深く関わりを持つことができるようになり、当院への期待と満足が膨らんでいることも分かった。

良い分娩をするためには、健康な妊娠生活を送れる体作りが重要であり、それを実現するのは助産師の“充実した保健指導”に尽きると考えている。異常の早期発見や異常を引き起こさないために、状況をくまなく把握してケアにつなげて行くのは、私たち助産師の役割である。

3.骨盤ケアとの出会い

助産師外来を始めて感じたことは、妊婦の殆どが何かしらのマイナートラブルを抱えており、苦痛を訴えていた。その殆どが腰痛、便秘、頭痛であり、同時に骨盤位の増加もあった。これを改善すべく最良の手段はないかと調べていたところ、母子整体研究会代表・渡部信子先生考案の「トコちゃんベルト」が目に留まった。すぐに受講したセミナーの中身は、まさに「目から鱗」が盛りだくさんで、今でもその感動が私の原動力となっている。

早速、「トコちゃんベルト」を腰痛で苦しんでいる妊婦さんに装着してみると、先ほどまで歩くのがままならなかった人が、スタスタと軽快に歩き始めた。手軽にできる操体法とベルトを装着しただけである。これには私自身本当に驚き、感激した。また、骨盤位に対しては早期から妊婦の骨盤ケアをすることで、帝王切開を減らせたことにも手ごたえを感じた。

今までは、妊婦が腰痛などマイナートラブルを抱えるのは仕方がないことであり、耐えてもらうしかないものだと諦めていた。骨盤位も時期が来て改善しなければ帝王切開適応は仕方がないことだと思っていた。しかし実際はなすべき技術がすでに確立されていたのであった。私がただ無知であっただけである。勉強不足であった自身を猛省した。

4.正常をより正常にするために

ある時、分娩時に骨盤ケアを行った後、とてもスムーズに進行した分娩があった。その直後、院長は「こういうお産だったら何件あってもいいよね」と微笑んでいた。日々分娩と奮闘している院長である。助産師がいてもすべての分娩に立ち会うことを必定とされるだけに、スムーズなお産、つまり、分娩経過が早く、出血が最小限であったことが、院長に好意的に受け止めてもらえた理由であろう。院長自身の疲労も軽減できたであろう。しかも、お産は軽かったので産婦からも感謝された。まさに一石二鳥である。助産師が技を磨き、なせる技で正常をより正常に持って行く。これができたとき、至福の笑みがこぼれるのが助産師ではないだろうか?

5.一年前の私だったら帝王切開を・・・

休診日に前期破水入院、難しいお産になると直感。身長152 ㎝・体重61 ㎏・初妊初産・39 週2 日・羊水過少・推定体重2700g。入院時所見は、羊水混濁Ⅲb・ST floating・子宮口3 ㎝開大・eff30%・FHR 著変なし。

帝王切開適応と思い院長に状況報告をしたところ「児心音が大丈夫ならトライして欲しい」との指示。患者本人には緊急手術になる可能性もあることを説明し、同意を得た上で、早速陣痛促進剤の点滴を開始した。同時に骨盤ケアを実施した。すると、30 分後には児頭下降し、子宮口も7 ㎝開大。一度も児心拍数が下降することなく、その後2 時間で児娩出。児はとても元気で、産婦も疲労した様子はなかった。初産婦の通常の半分以下の分娩所要時間だったのだから、当然と言えば当然。羊水混濁が顕著であったにもかかわらず、正常分娩の経過をたどれたことに驚いた。

その分娩が終わった直後、私は「ハッ」とした。一年前の私、つまり骨盤ケアができない私だったら、陣痛促進剤の使用が定石と思い、ただ待つことしかできなかっただろう。
それは緊急帝王切開を高率で発生させる状況を、受け入れるしかなかったであろう。

分娩に骨盤ケアを積極的に導入することにより、緊急帝王切開の発生率を減らし、それが院長を含めスタッフの疲労を軽減することにもつながり、医療費削減にもつながる。私が骨盤ケアに出会い、それをお産に取り入れてからは、当院における緊急帝王切開率が半分以下に減少した。このことは院長をはじめスタッフ一同感激している。

6.大いなる喜びと感謝

当院で第一子を分娩し、産後の入院中に突然、腰痛と恥骨痛などの激しい痛みに襲われ、立つことも座ることもできずに、寝たきりの状態になってしまった褥婦がいた。院長はすぐに骨盤が原因であると判断したが、その頃院内では骨盤ケアを行っていなかったため、院長が懇意のカイロプラクターを呼んで療術を施してもらった。症状は若干改善されたものの、産褥5日の退院時も歩行は困難。その間の本人の苦痛は相当なものだったであろう。
それはまた、分娩に対して強い恐怖感を残すことになった。

その後、第二子を妊娠したため来院したが、前回の分娩がトラウマとなっていた。私は本人からその時の切実な話を聞き、妊娠初期から骨盤ケアをしていこうと決心した。妊娠期間中に幾度か骨盤ケアを施し、産直後も同じように骨盤ケアをした。すると、歩けなくなるどころか、腰痛自体が全く無くなってしまった。しかも、分娩も楽にできたことに本人は大変驚き、大喜びされた。そして、私たちスタッフに深い感謝の言葉を伝えてくださった。それは私たちにとっても大いなる喜びと感謝であった。

7.育てやすい子を生み育てるために

(有)青葉が作成配布した「育てやすい赤ちゃんを産み育てるためには」のポスターを待合室に掲示したことがきっかけで、妊婦自身が胎内の赤ちゃんの様子に関心を持つようになり「どうなっていますか?」と、エコー検査中に医師や検査技師に尋ねるようになってきている。医師からは内診エコーでGS の形状が丸くないときに、検査技師からは経腹エコーで胎勢が良くないときに、すぐにコメントをもらう。反屈位や膝関節伸展などの状態が発見されるとすぐに、簡単にできる操体法を実施し、改善に向かうように指導している。
得られた情報を確実にケアにつなげて行くには、職種間の連絡を密にすることが大事ある。

8.心を寄せ合い理想の分娩へ

医師からの信頼を得て、妊産婦との信頼の絆を築くには、助産師自身が持っている技術を向上させ、提供しなければ始まらないと考える。母子医療危機が叫ばれる中、正常な妊娠分娩のための援助ができるよう、助産師自らが向上心を持つことが何よりも重要である。
私はその第一歩として、まず、この骨盤ケアを充実させていきたい。それにより、多くの妊婦が健全で安全な妊娠分娩経過をたどり、健康な児を生み育てることができると考える。

それには、医師と助産師が共通の認識と理想のもとに心を寄せ合い、一体となることが不可欠である。それができて初めて可能になり、さらに、育児へ、次の妊娠へと、プラスの連鎖への布石になると私は確信している。