第24回日本助産学会 学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART4

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―納得できる仕事を求めつつ助産を育む―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
NPO 法人 母子整体研究会代表理事 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 急増する母子整体のニーズに応えられる体制作りを
東京都杉並区 出張開業 助産師 恒川 由紀

演題2 骨盤ケアを導入し助産院での安全快適な分娩を実現
和歌山県田辺市 ちひろ助産院 院長 大平 昌子

演題3 「スタッフ全員が骨盤輪支持を行える」を目指して ~スタッフへのアンケート調査より~
広島県三原市 社会医療法人里仁会 興生総合病院 助産師 山本 久美子

演題3 「スタッフ全員が骨盤輪支持を行える」を目指して
~スタッフへのアンケート調査より~

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山本久美子 新川友規 坂井孝江

広島県三原市社会医療法人里仁会興生総合病院
山本久美子 新川友規 坂井孝江

Ⅰ.はじめに

近年、産後に腰痛や恥骨痛や臀部痛などの不快症状に悩まされ、日常生活に支障を来している褥婦に出会うことが増えてきていると痛感する。現代は昔とくらべて車社会化となり、日常生活もすっかり省力化されたため、自然に体を動かす機会が減ってきた。そのため、筋肉や靱帯が昔に比べ弱くなり、さらに、妊娠するとリラキシンなど靱帯を緩めるホルモンが分泌され、分娩時に骨盤が最大に緩み、その後の歩行などでゆがみやすくなっていると考えられている。

また、独身の若い女性においても腰痛を訴える女性が増えてきていることや、その対策として骨盤ケアが雑誌などに載ることが多くなった。そのため、骨盤ケアの必要性が一般の人に広く浸透してきた。

妊産婦の腰痛の原因や対策について、整形外科医の久野木1)は「仙腸関節あるいは骨盤輪由来と考えられる腰痛では仙腸関節痛、臀部痛、鼠径部や恥骨結合の痛み、大腿前面の鈍痛が骨盤輪支持することによって軽減させられる」と述べている。そのため、当院でも平成20 年6月より骨盤輪支持を取り入れた。

骨盤輪支持を実施し始めて1 年経過したものの、スタッフ全員が同じ意識の下でケアできていない場面に直面することがたびたびあった。そのため、スタッフの実態調査を行い、スタッフ全員で勉強会を重ね、ケアの質の向上とスタッフの意識向上が得られたので、発表する。

Ⅱ.研究目的

スタッフの骨盤輪支持に対する意識とケアの質を把握し、変化と向上を目指す。

Ⅲ.研究方法

1.対象

表1:当病棟のスタッフ構成

当病棟スタッフ(表1)

2.研究期間

2009 年4 月~2009 年12 月

3.方法

図1:分娩直後に骨盤輪支持をしたことがありますか?

Ⅳ.結果

【1回目アンケート】勉強会前(H21年7月)

「分娩直後に骨盤輪支持をしたことがある」と答えたのは10 名(図1)。「いいえ」と答えた理由は表2 および表3 のとおりであった。

表2:「いいえ」と回答した理由
表3:「いいえ」と回答したその他の理由、表4:歩行開始時骨盤輪支持の指導をしなかった理由

「歩行開始時に指導をしたことがある」と答えたのは5名のみ(図2)で、しなかった理由は表4のとおりであった。

図2:歩行開始時に骨盤輪支持指導をしたことがありますか、表5:自分自身に骨盤輪支持をしてみて

【2回目アンケート】勉強会後(H21年10月)

勉強会後3カ月経過した頃、スタッフの意識の変化を確認するため、2回目のアンケートを行った。

2回目のアンケートでは、「自分自身に骨盤輪支持をしたことがある」と答えたのは12名(図3)、その12 名に、骨盤輪支持をしてみてどうだったかとの質問に対し9名は安定感があるなど症状軽減に役立っていると答えた(表5)。「これからも自分自身に骨盤輪支持を続けますか」という質問の回答は表6の通りであった。

表6:これからも自分自身に骨盤輪支持を続けますか

「褥婦に骨盤輪支持指導をしたことがありますか」の問いに対し、12 名がはいと答えた(図4)。「はい」の場合の褥婦反応としては、症状が軽減されて喜んでもらえたとの回答が12名あった(表7)。しかし、「不快になった」との反応も2 名あった(表7)。

図4、図5、表7:褥婦の反応(はいの場合)、図6
表8:自分や褥婦にこれからも必要と思いますか

「これからも褥婦への骨盤輪支持指導を続けますか」に対し12名が「続ける」と答えた(図5)。「意識は変わったか」の問いに対し、10名が「変わった」と答えた(図6)。

「自分や褥婦にこれからも必要と思いますか」に対し「両方に必要」と回答した人が5名(表8)。これからも続けるかについては9名が続ける、1名が検討中・分からない、3名はいいえと答えている。また、13名中7 名のスタッフは、自分自身に骨盤輪支持が必要と認識していることが確認できた。

Ⅴ.考察

骨盤輪支持を導入後1 年経過したのに、スタッフから「骨盤輪支持の指導に自信がない」という声が聞かれ、現状を把握するためアンケートを行ったことは、問題を解決するのに大いに役立った。

アンケートの結果、骨盤輪支持の指導に自信を持って指導を行えていない状況があることを確認した。

そこで勉強会を行い、なぜ骨盤輪支持が必要なのかを確認し合い、自分自身やスタッフ間、褥婦への骨盤輪支持の方法を練習し、実践した。

それにより、褥婦からは腰痛が楽になったなどの反応が得られ、ケアの質の向上に役立ったと考えられる。

アンケート実施後勉強会を開き、1 回目のアンケートから3 ヵ月後に行った2回目のアンケートでは、「これからも褥婦へ指導を続けますか」との問いに対し、12 名中11 名が「続ける」と答え、スタッフの意識の変化が認められた。

スタッフ全員がほぼ同様の内容で指導が行えるようになり、スタッフの成長と勉強会の成果に、確かな手ごたえを感じる。

しかし、骨盤輪支持を行った褥婦の反応の中に「不快になった」と回答した人が2 名あった。
これは、着用方法に問題があるか、もしくは、骨盤輪支持を行う前に操体法などを行って骨盤のゆがみを整える必要があったと推察される。そのため、今後は骨盤ケアの三原則「下垂した内臓を上げる。ゆがんだ骨盤を整える。緩んだ骨盤輪を支える」を的確にできるよう、勉強会を重ねていくことの大切さを感じる。

Ⅵ.結論

勉強会

当病棟において平成20 年6 月より骨盤輪支持を導入し、1 年経過したものの、スタッフから「骨盤輪支持の指導に自信がない」という声が聞かれた。「スタッフ全員が骨盤輪支持を行える」ことを目指し、現状を把握するためアンケートを行った結果、「できない」理由が明確になった。

問題解決のために勉強会を重ね、さらに調査を行った結果、多くのスタッフが骨盤輪支持の必要性を理解し、骨盤輪支持と骨盤輪支持指導が行えるようになった。その結果、褥婦やスタッフから「楽になった」との声が聞かれ、ケアの質の向上と、仕事に対するスタッフの意識が向上した。

今後も全員が同じ意識の下で、的確なケアが提供できるよう定期的な勉強会を継続して開催したい。

勉強会勉強会

Ⅶ.おわりに

現在、マタニティクラスで骨盤ケアを取り入れているが、その重要性が十分伝わっていないのが現状である。今後妊娠初期から、妊婦自身が骨盤ケアをして自らの生む力を育てられるよう、スタッフの助産力向上を目指して努力したい。

Ⅷ.引用文献

  • 久野木順一:妊娠と腰痛、からだの科学、206 巻PP65-69 1999

Ⅸ.参考文献

  • 渡辺博他:妊娠中の救急症候5 背部痛・腰痛、今月の臨床、57 巻3 号2003.
  • 渕瀬佳子他:早期産褥ケアーにおける骨盤固定の有効性について、母子整体研究会研究発表会抄録集、P21、2009.
  • 合阪幸三:産褥期の尿失禁に対する骨盤支持ベルトの効果、第44 回日本周産期・新生児医学会および学術集会の中で発表される研究の抄録、2008.
  • 合坂幸三:妊娠・産褥に及ぼす骨盤弛緩の問題、第49 回日本母性衛生学会総会・学術集会、P82008.
  • 渡部信子:骨盤ケア(整体)、助産雑誌、60 巻第5 号2006.
  • 橋本千春他:褥婦のウエストニッパー着用に関する研究、母性看護、P149、2005
  • 合阪幸三他:妊産婦の腰痛、恥骨部痛に対する腰腹部固定帯の(トコちゃんベルト)の有用性、日本新生児学会雑誌、V0l、37 No、2 P376、2001.
  • 山村知他:妊娠中の腰痛に対する腰腹部固定帯(トコちゃんベルト)の使用について、中部日本整形外科災害外科学会雑誌、Vol52、No2、159―360、2009.
  • 合阪幸三他:妊産婦の腰痛、恥骨部痛に対する腰腹部固定帯(トコちゃんベルト)が有用であった1 症例、産婦人科の実際、Vol52、No、2 P261―263、2003.
  • 岸田蓄子他:妊産婦にみられる腰痛とその対策、産婦人科治療、Vol、92 No、2、P152-156、2006.
  • 大野弘恵他:妊産婦の腰痛の実態―産褥早期腰痛からの検討、岐阜医療技術短期大学紀要、No、20、2005.