第34回日本母体胎児医学会学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART7

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―胎児期・新生児期からできる股関節脱臼の予防―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 不良胎勢は整形外科疾患と深い関係がある
特定医療法人社団昭愛会 水野記念病院 病院長 鈴木茂夫

演題2 当院における新生児ケアのご紹介
医療法人恵仁会 田中病院 副主任 助産師 栗原芳美

私の夢“股関節脱臼絶滅”

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助産師 渡部 信子

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
助産師 渡部 信子


私が京大病院に就職して3年目の頃から、小児整形外科の先生達が新生児室に全児の検診に来られるようになった。その内の一人が学生時代のサークルメイトで今回の演者、医学部を卒業したばかりの鈴木茂夫先生である。検診の目的は、股関節脱臼は先天的に起きるのか、児の扱い方によって後天的に起きるのかなどを明らかにすることであった。それにより、オムツの当て方やオムツカバーは現在の形となった。

その後、私が婦人科外来に替わると、鈴木先生は、胎内姿勢と股関節脱臼の関係を研究するため、外来妊婦の腹部超音波検査に来られるようになり、新しい発見をいろいろと私に語ってくださった。
その中で最も私が衝撃を受けたことは「妊娠後期に膝を伸ばしている胎児は生まれたら必ずクリックサインが(+)だ。膝を伸ばした姿勢は妊娠10週台にできて、一旦伸びたら生まれるまでずっと伸ばしている子がいる」ということであった。どうしてこうなるのか?

股関節脱臼になるかどうかは妊娠中から分かるのだから、生まれてすぐに股関節脱臼を予防する児の扱い方を続ければ、股関節脱臼にならないのである。私は現在までずっとこの教訓を励行し、私が出会った新生児で股関節開排制限をきたした子はこれまで一人もない。なのに、鈴木先生が論文を発表されてから30 年にもなるにもかかわらず、このことは日本中にほとんど知られておらず、股関節脱臼予防の視点で胎内姿勢を超音波で確認している産婦人科医がいるなど聞いたことがなかった。

整形外科医は、妊娠中に胎内姿勢を知ることは困難であり、ましてやそれを改善させられることはまずない。しかし、最近ようやく我々整体を学んだ助産師の影響で、GSや胎勢に関心を示し積極的に写真を撮ってくださる産婦人科医が現れ始めた。そして、その助産師達のケアで、胎勢を改善できたという報告も相次いでいる。

今回は、股関節脱臼予防の視点で胎勢を診ることの重要性を鈴木先生に、新生児ケアの重要性を栗原芳美さんに講演していただく。栗原さんの病院で実践している“まん丸おくるみ” は、やろうと思えば、明日からでもどんな施設でもすぐにできる。“妊娠早期から骨盤をケアし、新生児を丁寧に育てることで股関節脱臼を絶滅したい” それが私の夢である。

今回のセミナーに、重症の股関節脱臼だったお子さんを持つお母さんから、ぜひとも医療者に訴えてほしいとのメッセージをいただいたので、ここにご紹介します。

全身の関節が柔軟に動く、丈夫な育てやすい子どもを育てるために、妊婦の骨盤をケアすることは、同時に妊娠分娩経過を良好なものとし、産婦人科医や助産師の負担軽減にもつながると確信している。このことは多くの実践と報告、エビデンスを積み重ねていかないことには、日本中に普及していかない。皆さまの奮起を期待してご挨拶といたします。

娘を妊娠中の35w0d、胎動がほとんどなく、エコー検査の時に私はおなかの左下を指さして「このポコッと出っ張っているのは何ですか?」と技師さんに尋ねました。すると「赤ちゃんの右足が突っ張ってるから、かかとだよ」と教えてくれました。

病院の1ヶ月健診で、私は娘が「右をよく向いている、頭の形がいびつなのが気になる、オムツが当てにくい」など質問しましたが、先生は「股関節の詳しいことは3ヶ月健診で見ますから大丈夫ですよ」といわれました。「股関節? そんなこと質問もしてないのに?」、私に はこの答えの意味がよくわかりませんでしたが、「大丈夫ですよ」の言葉だけ信じてしまいました。

4 ヶ月健診で「股関節の開きが悪い」と言われ、私は言われた通りに娘を整形外科へ連れて行きました。そこで先生に「この子歩けなくなるよ。手術しても歩行が困難になる可能性が…」と言われたものの納得できず、別の小児整形外科にも行きました。何を信じて良いのか全くわからない中、「一刻も早く治療を進めなくては」との思いに駆られ、リーメンも着けましたが、良くなる気配はありませんでした。

8ヶ月になった時、決心して渡部先生の施術を受けに行きました。わずか1分? それだけで、ハイハイの姿は豹変! 渡部先生はエコー写真を見ながら「股関節脱臼になったのは胎内で膝を伸ばしていたからで、貴女のお世話の仕方が悪かったせいではないよ」と説明して下さいました。それを聞き、それまでのことを思い出して、涙が止まりませんでした。

6歳になった娘は走って、転んで、踊って、歌っています。こんなに元気な姿を現実に見つめながらも、当時のことを思い出すと今でも涙が溢れます。産婦人科の先生、助産師さん、私のように悲しい思いをするお母さんがなくなるよう、赤ちゃんが胎内で膝を伸ばしていないか、しっかり診てあげてください。そして、直る方法を教えてあげてください。お願いします。