第34回日本母体胎児医学会学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART7

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―胎児期・新生児期からできる股関節脱臼の予防―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 不良胎勢は整形外科疾患と深い関係がある
特定医療法人社団昭愛会 水野記念病院 病院長 鈴木茂夫

演題2 当院における新生児ケアのご紹介
医療法人恵仁会 田中病院 副主任 助産師 栗原芳美

演題2 当院における新生児ケアのご紹介

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副主任 助産師 栗原芳美

大阪府茨木市 医療法人恵仁会 田中病院
副主任 助産師 栗原芳美

Ⅰ.はじめに

1. 病院紹介

写真1:万博公園へ月1回妊婦ハイキング

私が勤務している田中病院は大阪府の北部に位置し、1970(昭和45) 年に万博が開かれた万博公園(写真1) や大阪大学病院がすぐ近くにある、環境の良い住みやすいところにある。大阪府は全国に先駆けて母体搬送システムが確立したところであり、私の病院からの母体搬送も新生児搬送も受け入れ施設が整備されていて、安心して分娩を扱える環境ができている。

写真2:分娩室(洋室)、写真3:分娩室(和室)
図1:分娩・帝王切開件数

当院は病床数78 床、診療科は6 科。2004 (平成16) 年にリニューアルし(写真2,3)、現在の産婦人科病棟は21 床。年間分娩件数は、毎年600 件前後で、2010 (平成22) 年は612件でうち1 件は双胎。帝王切開は毎年1割余りである(図1)。

産婦人科医は4 名でうち1 名は非常勤。小児科医も1 名、非常勤であるが毎日出勤されている。看護師・准看護師は合わせて10 名で全員 常勤。助産師は12 名いるが、半数は非常勤である。

2. 新生児ケア見直しの動機

私の第一子は出生直後から啼泣が激しく、四六時中抱いていないといけない状態が続いた。いろいろと試行錯誤の末、おくるみで丸くくるんで抱いたところ、ピタリと泣きやんだ。それ以来、第一子も第二子も、私は自分の子どもを丸くくるまずに子育てをすることは1 日もなかった。その頃の私には、どうして私の子どもはこんなに泣くのか、丸くくるむとどうして泣きやむのか、理由が分からなかった。その後、2006 (平成18) 年の夏、母子整体研究会のベビーセミナーを受講し、私の疑問はやっと解決。丸くくるむことが理にかなっていたことが理解できた。

また近年、激しく啼泣し、そり反って抱きにくく、母乳を上手に飲めず、母親達を悩ます子が激増しているように思え、その解決のためには、正常な胎勢に近くなるよう、抱く時も寝かせる時も丸くくるむようにすれば、私のように子育てに悩む母親は減るのではないかと考えた。

Ⅱ. 当院における新生児ケアの実際

1. 抱き方と寝かせ方の工夫、取り組みの経過

写真4:分娩室でまん丸おくるみのまま我が子を抱っこ

1994 (平成6) 年~出生後2 時間、母親に抱いてもらうようにしていた。2006(平成18)年夏から、現在のケア方法に変更。出生直後はカンガルーケアで母子の素肌が触れ合うように抱いてもらい、保温と良胎勢を維持できるよう、児の上からバスタオルで覆うようにくるんでいる。児娩出から胎盤娩出までの約5 ~ 10 分間その状態を保った後、児の清拭・身体計測・着衣を行ってから、バスタオルできっちり丸くくるむ。これを当院では“まん丸おくるみ”と呼んでいる。その状態のまま分娩室で母親に胎盤娩出後2時間まで抱いてもらう(写真4)。その後、新生児室に入室して、コット内で少なくとも24時間、バスタオルで“まん丸おくるみ”を保つ(写真5)。24 時間経過し、身体の硬さが取れて、自力で丸い良姿勢が取れるようになったら、衣服や洗面タオルで、良肢位が保てる程度の“まん丸おくるみ” に変える(写真6)。また、最近は“天使の寝床” も導入されたため、身体が硬く丸まりにくい児に使用している(写真7)。

写真5:生後24時間まで、写真6:生後25時間以後、写真7:天使の寝床での寝姿

帝切出生の児は保育器に最低24 時間収容するので、“まん丸おくるみ” にはできないが、保育器内でもバスタオルをU 字状にするなどして、楽な良い姿勢を保てるよう工夫している(写真8,9)。

抱っこの時も児の姿勢を丸く保つことは大切であるが、母親が上手に抱けるようになるにはかなりの時間を要することが多い。ところが“まん丸おくるみ” にすると、たいていの母親はすぐに新生児を上手に抱くことができる。これも、大きなメリットである。また、看護スタッフは“まん丸おくるみ”にしなくても、丸く抱けるよう練習を重ね、抱く時はいつも “まん丸” を心がけている( 写真10)。

写真8:保育器内での工夫、写真9:保育器内での姿勢、写真10:看護スタッフが抱く時

このように丸くくるむことに関して「小児科医が反対し禁止する」と、いろいろな施設の助産師の声を聞くが、当院の小児科医は丸く抱くことに反対しないどころか、看護スタッフの人手が少ない時などは、自ら児をバスタオルでくるむなど、とても協力的である。

2. スキンケアと院内感染防止対策

毎日9時から全児を対象に沐浴をしている。そのため、出生後24時間以内に初回沐浴を実施。固形ベビー石鹸を使用し、液体石鹸や沐浴剤などは使用していない。汚染のひどい児や、母親が感染症(HBV.HCV.ATL‐Vなど)を持っている児は、カンガルーケア、身体計測、第一沐浴、“まん丸おくるみ” 抱っこ、新生児室入室の順に行っている。

沐浴はタオルなどを使用せずに行っているが、バスタオルでくるんで正常な胎児の姿勢を取りやすくなっているためか、反り返って泣いて入れにくいことはない。

院内感染対策も小児科医の指導のもと、マニュアルを作り、一児ごとの手洗いや沐浴槽の保清などを徹底して行っているためか、MRSA などの院内感染症の発生は起きていない。

3. 胎外生活への適応は順調か?

2011 (平成23) 年1 月と2 月の出生児数はちょうど100 人、冬で低体温を起こしやすい時期でもあるので、この2カ月間の体温・酸素飽和度(O2Sat.) ・排便・体重を、看護記録から収集した。

1) 体温

生後1時間の体温は、首の皮膚温の平均は37.37℃、直腸温の平均は37.43℃、生後2時間(新生児室入室時) の皮膚温の平均は37.24℃であった(図2)。

図2:出生時体重と体温

児の状態を悪化させないよう出生後の体温低下は避けねばならないが、当院ではインファントウォーマーなどの保温器具を使用することもなく“まん丸おくるみ” で母親が抱いているだけであるが、低体温の児はない。2 時間値でも低下傾向が認められない。また、低体重児ほど体温が低い傾向があるとの意見も聞くが、当院では体重と体温の間に相関関係は認められない(図3)。

2) 呼吸
図3:2時間後(新生児室入室時)の皮膚温と出生時体重の相関

酸素飽和度(O2Sat.) は95%以下になった場合は小児科医に報告することに決めているが、調査した2カ月間では、搬送例以外に95%以下になって小児科医に報告したケースはなかった。なお、先天性心疾患の判別のため、小児科医に診てもらうことなく、看護スタッフの判断でO2 を投与することはしていない。

3) 排便
図4:生後24時間以内の排便回数

調査期間の対象児100 人のうち経膣で生まれ“まん丸おくるみ”で24 時間過ごした87 人の排便回数は図4の通りで、24 時間以内に全員排便あり、生後1 時間で排便があったのは16 人(18.3%) である。

4) 体重

当院ではほとんどの母子は産褥(生後)5 日で退院する。退院時までに出生時体重には戻らないことが多いが、体重増加不良で退院できないケースはない。低出生体重児や体重増加の悪い子は、退院後7日(生後12 日) 前後に体重チェックするために来院し、小児科医の診察と指導を受ける。小児科医から私たちに児の体重に関する問題提起を受けたことはない。

こうして、2 カ月間100 例の体温・呼吸・排便・体重を不十分ながら見てみると、胎外生活への適応は順調になされていると言って良いと思う。

4. 光線療法

図5:光線療法の件数

光線療法の件数は、2010(平成22)年の1年間で39人。39/609 (年間出生数-新生児搬送数) で、6.36% である(図5)。当院の光線 療法実施基準は図6 の通りであり、この基準に基づいての適応は6人に過ぎない。それ以外の33人は生後5日で退院できるよう、また、退院後にビリルビン値が上昇して入院施設がなくて困ることがないよう、予防的適応で加療したものである。

図6:当院の光線療法実施基準

5. 新生児搬送

新生児搬送となった児は、2010( 平成22) 年は1 年間で4 人。出生数は613 なので0.65%。搬送理由は4 人とも呼吸障害。2 人は帝切出生、うち1 人は双胎の1 人で 低血糖を伴っていた。経膣出生の2 人とも吸引分娩で出生し、2 人とも熱発を伴っていた。

6. 股関節の開排制限と股関節脱臼

向き癖や股関節開排不良の児は小児科医が診察後、育児方法についての指導依頼が直接私に来るので、私が抱き方や寝かせ方、緊張した筋肉の緩め方などを母親に指導している。

当院では1か月健診以外に、後期健診(生後8カ月~ 1歳)も実施しているが、小児科医によると、股関節脱臼を指摘された子は、この5 年間で一人もいないとのことである。また、次の出産時などで母親から「この病院で出産した子が股関節脱臼になった」との声を、私たちが聞いたことも一度もない。

Ⅲ. 妊娠期からの保健指導の重要性

写真11:母親教室で骨盤ケアの大切さを伝える

出生直後にもかかわらず顔のゆがみや、向き癖、体幹のねじれ、四肢伸展の児を多々見かけ、胎勢はどうだったのかと考えさせられることが増えて来たと感じる。そのため、なるべく妊娠の早い時期から、母親教室での集団指導や、個人指導に力を注いでいる。

母親教室では妊娠期から「赤ちゃんを良い環境の中で育ててあげるには、母体を健康にしなくてはいけない。そのためには骨盤ケアが大切」と伝え、身体の痛みや不快症状を緩和し、身体のバランスを改善するための体操や骨盤輪支持実習をしている( 写真11)。

腰痛や恥骨部痛などの症状を訴える妊産婦には、当院では助産師がトコちゃんベルトⅠ・Ⅱ、妊婦帯Ⅰ・Ⅱを着用指導しながら妊産婦にお渡している。その品をカルテに記入し、事務で会計処理される。

写真12:単殿位で帝王切開の児、写真13:背部を丸く膝が屈曲するように手当とポジショニングをして95分後

しかし、母親教室や助産師外来で私と出会うことなく、胎児が膝伸展姿勢であるにも関わらず、私に出会った時にはすでに妊娠後期となっているケースも残念ながらある。写真12 もそんなケースであり、膝を強く伸展させた単殿位で帝切出生直後の児である。保育器内でも、背部を丸く膝が屈曲するように手当とポジショニングを工夫することにより、徐々に良好な姿勢に近づく(写真13)。このように単殿位から帝王切開になるケースがないよう、妊娠期の保健指導をより充実させていきたい。

Ⅳ. まとめ

他の出産取り扱い施設で働いた経験のある助産師から「ここは光線療法が少ない。緊急帝王切開が少ない。新生児搬送が少ない、、、」との声をしばしば聞いていたが、今回、これらの数値を見つめて「それって当たっていたんや」と私の中で、今まで実践してきたことに確信を持つことができた。

新生児が順調に胎外生活に適応できているのは、児が良好な胎児姿勢を保つ“まん丸おくるみ”が最も大きく関与しているのではと考える。

また、胎児が健康に育つ子宮になるようにと、妊婦への骨盤ケア指導を重視してきたことが、妊娠分娩経過や児の成長発達を順調なものとする礎となっていると思う。健康で育てやすい子どもを生み育てるためには、良好な胎勢を維持できるよう援助することが肝要であり、それを可能とする産科医療のシステム作りが重要であると思う。

全ての母親が育児を楽しめるよう、鈴木先生や皆さま方と意見を交換し、より良い母子ケアを皆さんと共に目指したい。

参考文献

  • 渡部信子, 母子整体における今後の課題, 母子整体研究会第1 回研究会抄録集, 46-49, 2009
  • 竹内華子, 「笑顔で楽チン子育て」を支援する発達教室, 10-19, ( 有) 青葉ランチョンセミナー 骨盤ケ アで改善! Part5, 2010