第50回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART3

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―早産・骨盤位・帝王切開を減らそう―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
NPO法人 母子整体研究会代表理事 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 骨盤施術と整体マザークラスで得た低値の帝王切開率
マミーサロン室長 助産師 是枝 貴子

演題2 両親学級に骨盤ケアを取り入れて ―骨盤位の推移―
はやかわクリニック 助産師長 目黒 美千子

演題3 当院における早産予防のケア ―早産できなくなった地域の中で―
広瀬産婦人科医院 助産師 鬼塚 恵子

コラム 早産できなくなった地域の中で母子の健康増進を目指して開業
マミーサポートみのり 室長 助産師 中園 妙子

演題2 両親学級に骨盤ケアを取り入れて ―骨盤位の推移―

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助産師長 目黒美千子

はやかわクリニック 助産師長 目黒美千子

Ⅰ.骨盤ケア導入の経緯

当院は、昨年の分娩件数が386件で16床の診療所である。開院して5年が経過した。 当初から、助産師外来を設立し妊産婦の保健指導を行ってきた。

助産師外来を行って気づいたことは、頻尿・残尿感・便秘・腰痛・恥骨痛・そけい部のつる感じなどの不定愁訴が予想より多いことである。これらは、お産が近づいた徴候として妊娠後期に訴えることが多い症状だが、近年、妊娠初期から訴える妊婦が増加している。その原因としては、妊娠前後からの運動不足により、骨盤の靱帯や筋肉が脆弱化し、本来ならリラキシンで妊娠後期にゆるむべき支持支帯が、妊娠初期から弛緩しすぎていることによると考えられる。さらに進行した場合には、膀胱下垂・子宮下垂・歩行困難なども見られる様になってきた。つまりこれらの症状を訴える妊産婦が、近年急増したのは妊娠子宮や骨盤内臓器が下垂していることが一つの理由であると考えられる*1)。当院は茨城県中心部の北に位置し、公共交通機関が少なく車依存社会であるため、このような妊産婦が多くなったものと考えられる。

これらの妊婦に、NPO法人母子整体研究会(以下母整研)で提唱している骨盤輪支持*2)を行ったところ、妊娠初期の腰痛・頻尿は軽減され、背筋が伸び、楽そうに「しゃんと歩けます」という言葉も聞かれるようになった。

これらのアプローチは、開院当初から行ってきたが、それだけでは改善しない方や腹部の張り・違和感を訴える妊婦の背景を分析してみると、妊娠期間中に一度は骨盤位になっていることが多い。また、これらの妊婦は、決して少なくないように感じられた。

写真1:操体法をする両親学級参加者

これまで当院では、骨盤位の場合、膝胸位指導を行ってきたが、膝胸位は、妊婦にとってつらい姿勢であり、時間を要し苦痛が大きく、継続して実施するのが難しい。そこで、無理無く、時間も掛からない、操体法を導入することとした(写真1)。

これは、冷えの改善にも有効であり、結果腹部の緊張が改善し、骨盤位が改善すると言われている*3)。当初は、妊娠25~28週位に医師から骨盤位を指摘された妊婦に操体法の指導を始めたが、骨盤位になってしまってから直すより、骨盤位の予防をした方がよいと考え、妊娠初期からの操体法によるセルフケア導入を目指し両親学級に取り入れた。

今回その途中経過を調査したので報告する。

Ⅱ 骨盤ケアの実際


Ⅲ 調査対象者

平成19年1月から平成20年7月までの分娩者984名(IUFDは除く)

Ⅳ 骨盤位の経過(今回の骨盤位には横位も含む)

骨盤位の推移を見てみると、妊娠期間中に一度でも骨盤位になった妊婦(以下骨盤位総数)は分娩総数中平成19年24.3%、平成20年26.7%、平成21年40.7%と(図1)、年々増加している。

図1:骨盤位推移

そのうち骨盤位のまま分娩に至ったのは、膝胸位指導時は、骨盤位総数中から平成19年16.5%、平成20年15.5%で、操体法導入後は、平成21年9.9%と減少している。 当院では、骨盤位は帝王切開である(以下骨盤位帝切)ため、これらの年の帝切総数率は、選択的帝王切開も含めて、平成19年24.3%、平成20年23.7%、平成21年23%であり、その中の骨盤位帝切率は、平成19年21.2%、平成20年23.1%で、平成21年は17.5%と減少している。平成19年と平成20年の差は、骨盤位総数は2.1%増、骨盤位帝切率は1.1%減と増減の差は少ないが、平成21年の骨盤位総数は、平成20年から14%と増加しているが、骨盤位帝切率は、5.6%減少している。

平成20年10月より、両親学級4回コースのうち2回に操体法を導入した。その後、平成21年1月から4回全クラス導入した事より、平成21年5・6月に分娩した妊婦が、平成21年1月の初回のクラスから多く参加していた事による効果と思われる。
操体法を導入した両親学級受講回数を調査したが(図2)、7 月現在で、まだ全員の妊婦が完全に参加するには至っていない。

図2:分娩月別の両親学級受講回数(平成21年)

Ⅴ 結論・課題

両親学級の操体法指導を受けた妊婦が、分娩を終えたのはまだ数ヶ月であるが、骨盤位帝切率が減少したことから、骨盤位に対して効果がある事が推察される。これは、操体法自体に、子宮周囲の筋肉や子宮筋を緩める効果がある事と、骨盤位指導を膝胸位から操体法に変えた事により、安楽に日に何回も行えるようになった事も要因と考えられる。

しかし、最終的に骨盤位のままだった妊婦は、妊娠初期から骨盤位であることが多かった。妊娠初期の子宮が細ナス型で、細いGS の中では正常な胎勢がとれないと渡部は指摘しており*1)、妊娠9 週までに骨盤ケアを実行することが大切であるとも述べている。

写真2:妊娠15週、写真3:妊娠14週単臀位

妊娠15 週前後から上記の様な胎勢の場合(写真2.3)、そのまま改善を見ることなく出生すると、生後は「寝ない・泣いてばかりいる」「反り返る」「抱きにくい」「乳首をすぐはずす」など育てにくいと母親が感じる児が多いと感じた。骨盤位では胎勢が悪いことが多く、特にこの傾向が強いと感じた。このため、正常な胎勢を保つよう妊娠初期からの骨盤ケアの大切さを感じている。

当院では現在、両親学級の1回目の参加が20週前後であるため、早期からの十分な骨盤ケアに至っていないと考えられる。

また、骨盤位がなかなか戻らない妊婦は、操体法を行っていない事が多かった。これには、妊婦の意識が、何もしなくても自然に頭位に戻ると思っている方や、胎勢の悪さから起こる出生後の育てにくさについての情報不足や、分娩様式にこだわりのない意識が関係していると思われる。

今後、両親学級が初期から受講できるように体制を整え、講義内容を操体法の必要性がいっそう理解できる内容に変え、早期に骨盤ケアを開始する事の重要性を妊婦に理解してもらう事が大切なのではないかと思う。

Ⅵ おわりに

写真4:授乳クッションを入れたコットにさらにおひな巻きでようやく寝た児

当院では、上記の児達に加え、頭位で出生した児でも、育てにくいと感じる母親が多いことから、出生した児には全員コットの中に授乳クッションを入れ、その中で良好な胎児姿勢*7)つまり脊柱全体後湾を保つようにしている。このようにしても良好な胎児姿勢を保てない児はおひな巻にしている(写真4)。

このようにべびぃ整体の必要な児が多いため、育児指導の中に取り入れて、母親もできるよう指導している。

今後、妊産婦の意識の向上、母子のゆがみのない身体作りをめざし、スタッフ一同力を合わせ、技術の向上に努めたい。

Ⅶ 引用・参考文献

  • 渡部信子, 「骨盤ケア」と「べびぃ整体」,母子整体における今後の課題,第1回研究発表会,母子整体研究会,46-49,2008
  • 渡部信子,トコちゃんのマタニティケア・ハンドブック,青葉,2009
  • 特集―妊産婦の身体づくり,助産師雑誌,6-2009
  • 高橋美保,妊娠初期からの骨盤ケアの実際,日本助産学会学術,9-16,2009
  • 渡部信子,骨盤メンテ,日経ヘルス,16-17,2007
  • 飯塚まさ子ら,骨盤ケア実施前後におけるGSの形状と自覚症状の変化, 第1回研究発表会,母子整体研究会,14-15,2008
  • 吉田敦子・杉上貴子ら,「骨盤ケア」と「べびぃ整体」, 第1回研究発表会,母子整体研究会,31-38,2008