第50回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART3

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―早産・骨盤位・帝王切開を減らそう―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
NPO法人 母子整体研究会代表理事 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 骨盤施術と整体マザークラスで得た低値の帝王切開率
マミーサロン室長 助産師 是枝 貴子

演題2 両親学級に骨盤ケアを取り入れて ―骨盤位の推移―
はやかわクリニック 助産師長 目黒 美千子

演題3 当院における早産予防のケア ―早産できなくなった地域の中で―
広瀬産婦人科医院 助産師 鬼塚 恵子

コラム 早産できなくなった地域の中で母子の健康増進を目指して開業
マミーサポートみのり 室長 助産師 中園 妙子

演題3 当院における早産予防のケア ―早産できなくなった地域の中で―

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助産師 鬼塚恵子

鹿児島県出水市広瀬産婦人科医院
助産師 鬼塚恵子

鹿児島県北部の産科医療事情と、当院の分娩件数

図1:出水市の出生数と当院分娩件数
図2:鹿児島県地図

全国的に分娩できる施設が減少する中で、当院でも出水市内のみならず、隣接する市や町、里帰りの妊産婦が通院され、当院での分娩数は年々増加している。現在、出水市内には分娩できる施設は3カ所あるが、出水市の出生数の45%は当院で誕生している。平成20年には当院の分娩数は出水市の出生数を上回った(図1)。

さらに、低出生体重児の出生数が、全国でも当地域でも年々増加傾向にあるにもかかわらず、出水市総合医療センターの産科が平成19年3月末で閉鎖となり、妊娠35週未満の早産ができる施設は最寄でも救急車で1時間近くかかる薩摩川内市の病院となってしまった(図2)。

しかし、そこは満床のことが多いため、搬送先は鹿児島県の三次周産期医療機関と位置づけられている鹿児島市立病院か鹿児島大学病院となることが多い。両院のある鹿児島市の中心部までは、救急車で最短コースの山越えでも1時間半以上かかり、母体や家族にとっても同行する職員にとっても多大な負担を伴う。また、どの施設も満床の場合は、数日の間、当院で待機しなければならないこともある。

このような状況下で、出水市内の各産科施設の助産師、開業助産師、保健所・保健センターの保健師が施設の壁を越えて集い、早産予防のために保健センターでの母親教室の講師を分担しあうなどの場をもつこととなった。

また、各施設でも早期対応を心がけ、妊婦には「市内では早産できません。だから自己管理をしっかり!」と伝えることとした。それから2年、低出生体重児の出生は減少してきた(図3)。

出水市における低出生体重児の体重別出生数

当院における骨盤ケアの取り組み

近年、当院の切迫早産患者も増えてきたため、当院では平成17年からNPO法人母子整体研究会(以下母整研)で学んだ「骨盤ケア」を取り入れ始めた。それにより、切迫早産患者への看護が大きく変わった。

まずは、点滴治療予定で入院したが内服でコントロールできるようになって、短期間で退院できる人や、点滴治療者も流量が減るなどの変化がすぐに見え始めた。また、頻尿も改善されるため、ポータブルトイレはほとんど設置していない。さらには、薬の副作用も楽になり、シャワー浴を毎日できるようになるなど、日常生活動作の拡大も図れ、精神面でも大きな効果を上げている。骨盤ケア導入5年目、母胎搬送者減少の兆しも見えてきた(図4)。なお、合併症ありの10人の内訳は、双胎2・前置胎盤5・PIH3である。

図4:当院からの切迫早産母体搬送件数

当院でのケアの実際

1. 外来でのケア

切迫早産内服治療者へ通常の早産防止指導に加え、骨盤輪支持の効果を説明後、実際にサンプルのトコちゃんベルトを使い、骨盤輪支持を体験して頂く。「体を動かすのが楽」、「赤ちゃんが上がっているのが分かる」、「下腹のキューっとした痛みがとれてきた」、「お腹が柔らかくなっている」などの反応が多く得られる。その場でベルト購入を希望され、症状悪化させずに自己管理できる人も増えている。

2.病棟でのケア


3.入院時のCTG上、すみやかな改善が見られた一例

2経妊1経産 妊娠35w2d 膣からの出血と下腹部痛増強あり来院。切迫早産のため内服薬を処方されていたが「飲んでも効かないから」と内服していなかった。

頚管長29.5mm。2~3分毎の痛み伴う子宮収縮(図6上段)があったが、骨盤高位でさらしでの骨盤輪支持をした直後から、子宮緊満感と下腹部痛が消失し、わずかに子宮収縮の波形は観察されるのみとなった(図6下段)。

この後点滴治療開始(104γ)したが、35w6dに頚管長が45.4mmに回復し、退院できた。

図6:骨盤ケアによるCTGの変化

4.入院中

図7:トイレで困らない下着やベルトの着け方、図8:しっぽ探しの操体法

5.骨盤ケア外来・教室

外来での骨盤ケアが不十分なため、今年6月から「骨盤ケア外来」と「骨盤ケア教室」を開催している。参加者からは「一人目のときから知っておけばよかった」、「妊娠初期に知るべきですね」、「体がこんなに楽に変われるんですね」、「気持ちも楽になりました」と反応は良い。

今後の課題

保健センターでの母親教室でも骨盤ケアの話をしているが、参加率はまだ半分にも満たない状況である。しかし骨盤ケアの認知度は高まりつつあり、「双子を妊娠したら友達がトコちゃんベルトを教えてくれた」という方もいた。

母整研会員で「母子整体サロン」を市内で開業している中園助産師からは、施術に来られる人のほとんどがトコちゃんベルトを持って来られることを聞く。つまり、母親同士の口コミで早産しないため骨盤ケアの必要性が、既に出水市内の母親の間で広く認識されていることが推測される(19Pの中園氏のコラム参照)。

母親教室参加率が低い割に、当院においても市内全体においても早産が減っている理由は、ここにもありそうだ。当院でもまだ妊娠初期からの骨盤ケア指導は全員に徹底していないため、今後の課題としたい。

まとめ

産科医療事情が厳しくなった中で、産科施設と保健センターとの間、そして各産科施設同士の連携は強まった。今後さらに、開業助産師や様々な職種の人たちとの連携も強めて、早産せず、搬送されず、元気な赤ちゃんを元気に産んで、我が子をすぐ抱きしめられるママたちを増やすため、今後いっそう力を注いでいきたい。

参考資料

  • 出水保健所管内未熟児関係統計
  • 「DVDで骨盤メンテ」日経BP社 監修 渡部信子
  • 「トコちゃんベルトの着用方法」パンフレット(有)青葉