第51回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART5

富山発 元気いっぱいの母子を育てる取り組み

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
NPO法人 母子整体研究会代表理事 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 妊娠中からの身体作りでハイリスク妊娠の予防を目指す地域活動の実際
富山県 たんぽぽ助産院院長 助産師 野澤 昌子

演題2 「笑顔で楽チン子育て」を支援する発達教室
富山県 親子育ちあい教室ぽぽらんど代表 竹内 華子

演題2 「笑顔で楽チン子育て」を支援する発達教室

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作業療法士 竹内華子

富山県黒部市 親子育ちあい教室ぽぽらんど代表
作業療法士 竹内華子

Ⅰ.はじめに

9年前、長男の完全母乳育児を目指していた私は、助産師の野澤さんに出会い、 一母親として野澤さんから自然な出産や、母乳や子育てのことなど多くを学んだ。 その後、野澤さん主催の子育て応援教室「赤ちゃん村」から有志が集まり「たんぽぽ畑」を意味する会「ぽぽらんど」を結成、私が代表を務めている。 今日は私と助産師がタッグを組んだ発達教室をご紹介する。

Ⅱ.発達教室の概要

富山市・魚津市・黒部市・入善町で開催、自宅と入善での教室以外は助産師と共に指導に当たっている。月に6回開催し、母親は都合の良い場所や曜日を選んで参加する。教室は予約制でどの会場もほぼ満員。教室は1時間半~2時間。自宅での個別指導は1組30分を目安にしている。対象は生後2ヶ月~独歩までの赤ちゃんとその養育者。妊婦さんや専門家の見学も受けている。

教室では「◯ヶ月だからこういう動作ができないとダメ」と言うのは禁物。「この子の筋肉の特徴と姿勢運動の発達から、今はこの状態である」という個人差を母親が理解できるように説明している。赤ちゃんの表現の仕方も様々なので、運動発達を促す働きかけは単なるパターン練習であってはならない。母親がジックリと子どもを触って観察して、現状や変化を理解し、次の発達に上手くつなぐ遊びやお世話を、自分で工夫できるよう援助している。母親にこのような観察力や洞察力が備われば、私達専門家もけっこう楽をして、楽しい子育てを支援できるのである。

Ⅲ.母親の教室参加動機


母親の教室参加

保健師や母子保健推進員はおそらく母親から直接、上記1.について相談を受けていると思われるが、この職種の人たちからの紹介はまだまだ少ない。新生児訪問で関われる時間は限られおり、多くの調査や説明、母親と新生児の観察、母親の悩みに対応するには限界があるとは思うが、子育てしやすい市町村にしていくには、多職種間の連携は不可欠であろう。

Ⅳ.各教室の特徴と流れと様子

1.たんぽぽ助産院

たんぽぽ助産院

富山市のたんぽぽ助産院での名称は「発達フォロークラス」。助産院における通常のベビークラスでは対応しきれない赤ちゃんや、早産児などが紹介で参加する。定員は6組、希望者が多い時には午前・午後2回開催することもある。キャンセル待ちも多いので、切実な問題がある方に優先参加してもらっている。

教室ではまず簡単に自己紹介をし、それぞれの母親が今困っていることや、今日の教室で解決したい問題は何かを把握。次に参加者全体に共通する正常発達の話をし、特に時期ごとの適切な姿勢作り(ポジショニング)について、一般の母親でも理解できるように赤ちゃんを触りながら聞いてもらっている。そして感覚と運動の要素に着目した抱き上げ方、抱き方、丸まる抱っこでの注意点と、寝る時のポジショニング・おひな巻きについて説明しながら実演をし、その後、実際にべびぃ整体や手遊び、丸まる抱っこの実習をする。

全体での指導が終わったら、ほとんどの子は授乳かお昼寝時間になるので、睡眠時のポジショニング指導や、覚醒している子から順に10~15分程度の個別相談に当たる。

2.魚津教室

魚津教室

魚津市では「ハッピーママ&ニコニコべびぃクラス」と名付けた教室を、地元の助産師と共に開催。定員は10組。会場がカルチャーセンターであるため、参加者の主目的は「楽しくベビマ!」であるが、べびぃ整体をまず行うことにより、ベビーマッサージを楽しんでもらえる。

スタッフは来室時から抱っこの姿勢などを観察して、母子の身体の状態を分析。ベビマに向けて赤ちゃんに仰向けのポジショニングを実施する。「天使の寝床」や授乳クッションなど赤ちゃんを丸く寝かせるグッズと、座布団・バスタオル・ハンドタオルなどを使い、それぞれの赤ちゃんを快適な状態にする。自己紹介の後、丸まる抱っこが上手にできるように、まずは母親の身体を整える上肢帯の操体法を行う。その上で赤ちゃんを丸まる抱っこして、赤ちゃんに「今からベビーマッサージをしますよ。楽しみましょうね。イイ気持ちになろうね」と、これから行うことを説明する。このオリエンテーションも脳の発達には非常に重要である。

べびぃ整体を取り入れたベビマは20分ほどで終了、続いてティータイム。ほとんどの赤ちゃんがベビマの途中や終了後に授乳時間となり、その後寝てしまうので、母親達は日ごろの赤ちゃんの様子を語り合ったり、相談しあったりのんびりとティータイムを楽しむ。ここで泣き叫んで落ち着けない赤ちゃんは歪みやコリが重度であることが予想されるため、私の自宅教室に来てもらうことになる。集団の中では改善できない問題は、より丁寧な個別の対応で解決する必要があるからである。休憩後、自己紹介やティータイムで出た話題を中心に発達の話をする。時間があるときにはうつぶせ遊びや、整体の要素を取り入れた手遊び、スリング指導などを行っている。

3.入善教室と自宅での個別指導

5組以下で、特徴は赤ちゃんと母親、個人個人に合った指導をしている。 母親が確実に自宅で丸まる抱っこ、スリング、べびぃ整体を実施できるようにプログラムを組んでいる。 また、赤ちゃんの発達レベルと母親からの希望によっては、座位やずり這い、四つ這い、などで姿勢を安定させる手技を覚えていただくこともある。 赤ちゃんや母親の持つ左右差やゆがみに応じて抱っこやポジショニングを工夫したり、べびぃ整体も赤ちゃんの左右差にあわせて、運動方向とスピードを調整したり、個人の特徴にあわせた対応をしている。

また、個人的にたくさんの相談事がある方や、障害の疑い、早産児、双胎、など育児書が参考にならない子育てをされている方が、個別指導を希望される場合が多い。

Ⅴ.教室のメリット

教室は基本的に集団なので、色々な運動発達レベルで、色々な筋の質をもった赤ちゃんが参加する。 赤ちゃん達はそれぞれの筋や向き癖、コリなどの特徴を様々な姿勢や運動で表現してくれる。 参加した赤ちゃん達の状態を、母親や私たちが丁寧に観察・触診して分析し、抱っこや寝方の指導、手遊びや体操、温めなどによって状態を改善していく。 その中で赤ちゃんの変化を共有できることや、他の赤ちゃんで良かったことを自分でもやってみることや、ちょっと先輩の赤ちゃんの真似をしてみることなどが教室で行うことのメリットであると感じている。

他の赤ちゃんと比べることで落ち込む母親もいるのではないか、といわれそうだが、比べて落ち込むのではなく、自分の子どもの特徴をより理解しやすくなるように説明し、次の発達段階に向けて目標を持って日々過ごせるように具体的方法を指導している。

また、母親同士が教えあったり、悩みを共有して、解決策を先輩ママに相談できることで「一人で悩まないで済んだ。良かった」との言葉も聞かれる。

Ⅵ.母親に対する正常発達の話

1.楽チン子育ての秘訣「丸く育てる」―天才脳を育てるにはまず泣かさないこと―

丸く育てることの意義を、姿勢の発達、それを支える感覚・運動・生理、認知発達的要素、と説明していくと、結果的には「泣かさない子育てをする」ということになる。泣かさない子育ては子どもの脳の発達を促進する。「天才脳を育てる」ためにはなるべく泣かさないというのが、脳科学では一般的である。しかし、私の場合、長男は斜頚の一歩手前というほど歪んだ頸の持ち主だったので、「泣かせない子育て」は私だけでなく、主人や私の妹弟をも巻き込んでのバトル。「床に降ろせない生活」であった。9年前からべびぃ整体を知っていれば私達家族は心から楽しく、楽チンな子育てができたのではないか…と今でも悔やまれる。そんな私の苦い経験も踏まえて、母子ともに精神的にも身体的にも落ち着いた楽しい子育てをしましょうと、話している。

2.姿勢の発達

出生直後~月齢1

ここでは仰向けの発達を取り上げるが、移動のためにはうつぶせの発達が非常に重要なので、教室ではうつぶせ遊びも指導している。紙面の関係上、仰向けでの運動発達のみ説明する。まず、出生直後~月齢1で特徴的なのは生理的屈曲、子宮内での胎児姿勢を保っている。重力がなければ頭部・両手・両足が正中に集まっているはずである。しかし、地球上には重力があるので、定頸前の頭部は左右どちらかに倒れる。ここから向き癖はスタートする。厳密には子宮内から頸を傾けている子も多いが、確実に母親の目に見え、触れられるのは生後である。

月齢1~2、月齢3~4、月齢4~5

月齢1~2になると生理的弛緩状態になる。まだ頸がすわっていないので、頭はどちらかに倒れる。ポジショニングしていなければ、赤ちゃんはATNR(非対称性緊張性頸反射)の影響を受け、また向き癖を強める。この時期までに向き癖に対応すると改善が非常に早い。自然に筋が弛緩していく時期なので、きれいにポジショニングしておくと元々あった左右差やコリが緩みやすい。

月齢3~4頃になると徐々に首が据わり始め、もう一度頭部・手・足が正中に集まってくる。これが正中線指向である。正中線指向は機能的対称姿勢といい、その後、正中線を越えた手と目のリーチ(視線を注ぐこと)や片手ずつ目標に向かってのリーチ(手を伸ばすこと)につながる姿勢の安定性を強化する。月齢6~7で手や目のリーチに誘発された寝返りができるようになり、仰向けでの姿勢発達は終了する。

月齢5~6、月齢6~7

3.解剖学的な脊柱の発達

図1:腰椎の前弯の発達

新生児の脊柱は胸椎・腰椎が強く後弯したCカーブを呈している(図1)。特に腰椎に注目してみると歩き出す頃に始めて腰椎が伸展しているのが分かる。大人のように脊柱のS字カーブが形成されるのは10歳頃である。生後間もない赤ちゃんが反り返ったり、大人のように真っ直ぐに布団に寝かされることは、解剖学的に不快につながると考えられる。赤ちゃんの脊柱は丸いのが正常なのである。だから、丸まる抱っこも、丸まる寝んねも、スリングも、脊柱の丸さを守るために非常に有効であると考えられる。

4.定頸までに向き癖は強くなる

このように姿勢や脊柱の発達からみると、向き癖は定頸までに強くなると言える。生後すぐから仰向けに平らな布団に寝かされることで、生理的屈曲を呈する脊柱は重力によって引き伸ばされてしまう。また頸部の筋は大きな頭部を支えられず左右どちらかに傾いてしまう。生後2ヶ月の弛緩期には全身的な低緊張による姿勢の不安定さを、床に接した頭部・肩・足部など身体の一部で強く押し付けることによって補い、姿勢を保とうとする。それが反り返りと表現される。新生児期にできた向き癖をATNRで強化し、一方向へのみ、いっそう反り返ってしまう。

5.感覚、特に触覚の話

丸く育てるためには赤ちゃんをおひな巻きで包んだり、クッションなどでポジショニングしたりすることが必要になる。この「包む」という行為によって赤ちゃんは姿勢がまとまり安定する。母親も抱っこや授乳がしやすくなる。つまり赤ちゃんは扱いやすく抱きやすくなり、母親とより密着しやすくなる。これは母子ともに安心・安全につながる。

また「包まれる」ことで皮膚から脳への感覚入力が増大する。「服を着てれば、皮膚からの感覚入力あるやないか?」と言う人もあるが、密着するように包まれると触圧覚も入力され、末消の受容体が増え、服を着ているだけの触覚刺激よりも脳への入力が増える。また、新生児の場合、ブカブカの服を着ていることが多く、服が浮いたり、触ったり、衣擦れのような分断された触覚入力がなされると、その分断された入力に合わせてちぐはぐな運動が出やすく、姿勢の不安定さにつながる。おくるみをすると赤ちゃんが落ち着くのは、このような理由により説明できる。

感覚入力の増大は①外界を知る手がかりとなるため、将来的な探索行動へつながる。また、②自己身体と外界との境界を知る手がかりとなり、身体図式を形成する基礎となる。この身体図式が形成されていることは、将来的に他人との距離感をつかむことにつながる。触覚もコミュニケーションの重要な基礎となるのである。

6.運動の話

感じるから動く、動くから感じる というのは脳への刺激入出力の基本となる。丸く包まれている中での運動は胎児と同じで、伸筋群の筋緊張を発達させる。早産児が低緊張なのは子宮壁を押したり蹴ったりする経験を十分せずに生まれてくるからである。正期産児でも発達の初期は生理的屈曲の後、生理的弛緩期がやって来る。この時、しっかり包んでおくと、筋は驚くほどしなやかに、それでいて力強く発達する。全体を丸く包んでおくことで一部分だけ筋緊張を強め、反り返ってくることはほとんどない。

丸く寝かせたり、スリングに入れていたりすると「そんな狭い所に入れたら大きくならん!」とよく言われるが、筋の発達から言うと包まれるように狭い所に入って動いていれば、伸筋の発達が進むので、むしろ成長発達を促進させると考えられる。

そして、包まれている中で動くことで、抵抗があるため深部感覚(固有覚・運動覚)はより明確となり、表在感覚(触覚・圧覚など)からの入力も増大するため、早期から運動方向の学習が進みやすく、運動の学習が強化されやすいと考える。

7.生理学的な話、生活リズムの発達

丸い姿勢は屈筋、特に腹筋が収縮しやすいため、呼吸が安定しやすくなる。呼吸が安定していれば、①胸郭の形状を発達させることができる。つまり、より深くゆっくりとした呼吸ができるようになり、②副交感神経系が優位となり、リラックスしやすくなる。そうすると良く寝て、穏やかに覚醒し、良い覚醒状態を保つことができる。③このような安定した、良い覚醒状態での刺激が脳の発達を促進する。

赤ちゃんは不快があると泣く。しかし、急な強い刺激でなければ突然泣くことはない。お腹がすいた、寒い、暑い、オムツを替えて欲しいなどの不快を訴えて泣く前には、ムズムズ動いたり、身体をよじったり、手足をバタつかせるなどの前兆が必ずある。良い覚醒状態で機嫌よく身体を動かし、楽しんでいる時の運動とは、明らかに違った運動で不快を表現することが多い。発声も、機嫌が良いときのクーイングと、不機嫌なときの唸りやぐずりは明らかに違う。このような違いを見逃さず、泣く手前で不快を取り除いてやれば「泣かさない子育て」ができるようになる。

呼吸が安定していて、不快な状態も作らない(つまり、泣かせない)ようにしておけば、大人の生活リズムに合わせた睡眠覚醒のリズムが作りやすく、2ヶ月を過ぎた頃には日中の覚醒時間が増え、夜間はまとめて寝るというリズムができ上がってくるため、母親もずいぶん楽になる。

8.認知発達―賢い子に育てるには泣かせないこと―

以上説明したように、感覚運動の統合と生理学的な発達は脳の発達に裏付けられている。泣かさないで丸く育てることは、生理学的に安定した脳の状態で、周囲の刺激を入力し、それに応じた運動を出力するというループを脳内に作る。早期から環境適応に向けての内的フィードバック機構を確立することになる。内的フィードバック機構とは「動くから感じる、感じるから動く」というループを作ることであり、自己身体内の感覚と運動を統合していくことである。

また、泣かさない子育てをすることは、基本的信頼関係の形成と、外的フィードバック機構の確立に役立つ。外的フィードバック機構とは、環境からの刺激を入力し、それに適した運動を調整しながら出力することである。内的フィードバック機構と外界からの感覚入力によって、環境に働きかける際の運動が調整される。これら二つのフィードバック機構の確立によって、私達はこの複雑な環境の中で、安全に、健康に、楽しく、快適に過ごせるのである。

9.反り返りや向き癖の強い子の発達

反り返りや向き癖の強い子

以上説明した正常発達を踏まえると、反り返り、向き癖のある子の発達は以下のようになる。
感覚は床と接した身体の一部から強い刺激が脳に入力され、運動としては、床に押し付けるような伸展とATNRの影響からくる一方向への反り返りが強くなり、抱きにくい子となっていく。
生理学的には、反ることで腹筋が引き伸ばされ呼吸が浅く早くなる。オッパイも飲みにくく、深く眠ることもできないので、不快な状態が長く続くことになる。
認知面から見ると、不快な状態を泣きで訴えるので、脳はパニック状態である。いつも一方向に反って、丸くなれないので、なかなか落ち着けず、外界の刺激に集中することができず、様々な学習の機会を失うことになる。
母親は抱っこしても、オッパイをあげても泣き止まず、寝てもすぐにグズグズと起きて、母子ともにまとめて寝ることができない状態にイライラしてしまう。悩みも多く、いつも睡眠不足で子育てが楽しめない状態になってしまうことは容易に想像できる。

Ⅶ.具体的指導

1.どちらの抱っこが安定して見えるか?

上:私がパンフレットを真似して抱いてみた写真、下:8歳の長男が0ヶ月の長女を抱いている写真

右上は私が「股関節脱臼を防ぐためには股に手を入れて抱きましょう」と書いてあるパンフレットを真似して抱いてみた写真で、右下は8歳の長男が0ヶ月の長女を抱いている写真である。赤ちゃんの姿勢が明らかに違い「どちらが安定しているか?」と問われたら、 右下を選ぶ人が多いのではないだろうか。抱いている人の身体もご覧いただきたい。私は赤ちゃんの頭側の肩が下がって、お腹は前にせり出して、二人して反り返っている状態である。手首は両方とも過度に掌屈していて指にまで力が入っているのが分かる。

長男は生来斜頚のように頸が右に傾いているので、やはり右手が緊張して右肩が上がっているが、脊柱が曲がっているように見えない。このように、丸まる抱っこは赤ちゃんだけでなく、抱く養育者の姿勢も安定させる。教室では実際に母親が自分の赤ちゃんを抱っこして鏡を見たり、私が抱っこして母親に赤ちゃんの様子を見てもらったり、背中を触診してもらったりする。

2.丸まる抱っこ

丸まる抱っこしてポーズを取れる長男

1ヶ月間ほぼ毎日丸まる抱っこしていた長男は、良好な赤ちゃんの姿勢を保ったまま、ポーズを取れるくらい抱っこが上達。抱っこからバウンサーに降ろすことや、段差を乗り越え母親に渡すことも可能になった。

3.丸まる寝んね

「丸まる抱っこからどうやって寝かせたらよいですか? 丸まる抱っこで寝てくれても、布団に降ろすと起きてしまいます」と言う母親はとても多い。

1)側臥位
a:生後すぐの側臥位のポジショニング

(a)は生後すぐの側臥位のポジショニングであり、NICUでは広く行われている。生後すぐ、生理的屈曲でまん丸の赤ちゃんを安定させておくには、ポジショニングは必須である。ポジショニングの基本は「気持ちよく包み込む」ことと、脊柱のCカーブを保つようにすることである。頭が大きく体幹が小さい赤ちゃんをそのまま側臥位にすると頸部が側屈し、頭の重みで肩を潰してしまう。そのため、枕は必ずするようにし、どの姿勢でも、背中側から見た時に頭部と脊柱が一直線になるように工夫することが大切である。基本的におひな巻きで赤ちゃんの姿勢を丸く保つと、あとは隙間を埋めるだけで、色々なバリエーションができる。

2)おひな巻き+ロール
b:バスタオルだけでできる仰向けでのポジショニング

(b)はおひな巻きを更に安定させるためにバスタオルでぐるっと包み込んだ通称さやかロールである。単に子どもの名前にロールをつけただけである。これも非常に安定して落ち着く。暑い時期には不適応であるが、体温が下がり気味な赤ちゃんや、寒い時期にはオススメのバスタオルだけでできる仰向けでのポジショニングである。


3)ハンモック
c:自宅に帰ってからはおひな巻きをしなくても比較的丸くなっていた

自宅に帰ってからはベビーベッドにハンモックを吊るして寝かせていた。(c)ここではおひな巻きをしなくても比較的丸くなっていた。ただ、頸枕は必要である。


4)天使の寝床
d:10分後に眠っていた2ヶ月の赤ちゃん
e:丸くしたら両手両足で遊べるね

今度、(有)青葉さんから発売される予定の天使の寝床は非常に丸まる寝んねをさせやすい商品である。(d)この赤ちゃんは2ヶ月であるが、泣いてばかり…と教室に来られたので、寝かせてみると機嫌がよく、10分後に見たら眠っていた。母親からは「コレ買いたいです」と切実な声が。頭や足の下に座布団やタオルなどを当てがって高さや脊柱の丸みを調整すると、それぞれの発達や身体に合わせてより理想的な姿勢で寝かせられる。eの写真の子は5ヶ月。両手で足を持って遊んでいる。「家では片足ずつしか持てなかったのに、丸くしたら両手両足で遊べるね」と母親も喜んでいた。


5)授乳クッションや座布団 仰向けと側臥位
授乳クッションと枕や座布団を組み合わせ

授乳クッションと枕や座布団を組み合わるのも良い。仰向けと側臥位の両方とも安定して丸くなれる。(f)

4. 伸展活動を促す遊び

このように「丸く、丸く」と言っていると「いつ伸ばすんですか?」と必ず聞かれる。お昼寝後、赤ちゃんは覚醒し、自分でおひな巻きを解いてうーんと伸びて出て来る。この出てくる過程が運動発達的には非常に大事である。そして覚醒している時には伸展の要素を多く含んだ手遊びや、体操、ベビマ、うつぶせ遊び、プレイジムなどを使った遊びなどで十分身体を動かして楽しむ。そして疲れたらオッパイを飲んで丸くなって寝る。起きたらまた遊んで、探索して、オッパイ飲んで寝る。赤ちゃんはこれらを繰り返して心身ともに目ざましいスピードで発達していくのである。

うつぶせ遊び プレイジム

Ⅷ.アンケート調査

1.アンケートの時期・方法・対象

教室に参加した母親達にアンケート調査をし、分析した。対象は平成22年9月中に発達教室に参加した母子のうち25名の母親。

2.アンケートの結果

1)子育てで困っていること

困っていることがある…19名、ない…5名、無回答…1名。たんぽぽ助産院と自宅の教室に通っている方は全員困っていることがあったが、魚津・入善教室には「困っていることがない」と答えた方がいた。

2)困っている具体的な項目
困っている具体的な項目

3)教室に参加して赤ちゃんが変化した点

4)母親自身の良かったこと
母親自身の良かったこと

5) 発達の話を聞きたい時期

妊娠中…12名、入院中…4名、新生児訪問…9名、1ヶ月健診…6名

3.アンケート結果の考察


4.アンケートのまとめ

母親が発達教室に参加することにより、母親の観察力や洞察力は向上し、育児不安が軽減している。母親が自信を持って育児をし、育児を楽しめるようにするためには、妊娠中に赤ちゃんの発達に関する情報を提供する機会を設けることが大切であると考えられる。

Ⅸ.結語

赤ちゃんの生活リズムに関する悩みや、向き癖、反り返り、泣きは医療や健診では引っかからないマイナートラブルである。しかし、これらの赤ちゃんの状態は母親を悩ませていることは事実である。私達はこのマイナートラブルに目を向け、赤ちゃんの状態を良い方向へ変化させるために、必要な情報を提供する発達教室を開催している。この教室は母親が笑顔で楽チン子育てをするために役立っている。「子育てって楽しいよ~、子どもってかわいいよ~」「母親になるって素晴らしいよ~」と多くの母親に伝え、知恵と技術で今後も多くの母子を笑顔に変えていきたい。

Ⅹ.おわりに

以下はアンケートに協力してくださった母親から「ぜひ学会で言ってください」とお願いされた伝言である。ここに参加された方々の明日の行動に期待したい。

小児科医や保健師、助産師などの専門家から見たら、「またこの相談?」と思われることで、私は毎日悩んでいました。向き癖や反り返り、泣くことはどの赤ちゃんにでも見られることかもしれません。でも、私は自分の赤ちゃんが苦しそうに泣いていたり、頭が三角になったり、抱きにくかったり、とてもしんどそうに見えて、かわいそうで、何とかしてやりたいと思っていました。専門家に相談しても「やがて目立たなくなるから」と言われました。「やがて」はどうでも良いのです。今、今、このしんどそうな状態を変えたいんです。保健師さんや助産師さん、看護師さんは母親から悩みを聞いたら自分が解決できなくても、解決できる人を紹介して下さい。それだけで「仕方ない」「皆そうだ」と言われて放置されるより、何倍も、何倍も感謝できるのです。「悩みを解決できる人につなぐ」ということも、立派な専門職としての技術だと思います。

参考文献

  • 「機能的姿勢―運動スキルの発達」Alexander R他著 高橋智宏監訳 協同医書出版
  • 「カパンディ関節の生理学Ⅲ 体幹・頭部」原著第6版 A.I.Kapandji 著 塩田悦仁 訳 医歯薬出版