第52回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART8

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―デジタルで検証する骨盤輪支持法の安全性と効果―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題  トコちゃんベルトの安全性 ―縦型オープンMRを用いての検証―
滋賀医科大学大学院医学系研究科 博士課程 齋藤祥乃

科学にするとは数字にすること

LINEで送る
助産師 渡部 信子

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
助産師 渡部 信子

科学と数字

私が助産婦学校時代「産科学異常編」を教えて下さったのは、今は亡き吉田吉信先生(当時京大産婦人科学教室の第一講師) であった。吉田先生の講義も試験も、とても高度で難解。「こんな難しいこと、助産婦学生に必要なことなんやろか?」と思うこともしばしばであったが、40年たった今も、私が仕事をしている中で基本となっている考え方のかなりの部分が、吉田先生から学んだことだと気付くときがある。
その一つが「科学にするということは数字にすること」である。これは当たり前のことなのであろうが、「統計は真実を語らず、真実を語るのは理論である」という蜷川さんの言葉を聞いた後だったため、当時の私にはかなりショックだった。
もちろん、統計や数字はいくらでも、都合良く捏造できる。大切なのは、納得できる理論と、多くの人々に実感を伴って納得してもらえる数字を出して行くことであると思う。

助産師もここまで高度な研究ができる

そんな納得の数字を出してくれたのが齋藤祥乃助産師。彼女の研究を見聞し、助産師でもここまで高度な研究ができるようになったことに感激した。滋賀医科大学には世界で2台しか稼働していない縦型オープンMR (立位・座位で撮影できるMR) があり、それを使えば骨盤輪の弛緩と内臓下垂の関連、トコちゃんベルトの有効性などを、数字にできるのではないかと考えたのである。今日はその中で分かったことの一部を発表していただく。
今日の発表以外にもたくさんのことを数字にすることができ、今回の学術集会で齋藤さんから「分娩後の子宮復古における骨盤ベルトの有用性」の発表があるので参考にしていただきたい。その要旨は、トコちゃんベルト着用群と非着用群で対比したところ、内子宮口の距離に、分娩後1か月の時点にのみであるが、有意差が認められたのである。
つまり、骨盤高位で下垂した子宮などの内臓を正しい位置に戻して、そのまま骨盤高位でトコちゃんベルトを着用すれば、立っても座っても内臓は下垂しにくく、産後1 か月では、トコちゃんベルトは子宮復古を促すということが、デジタルで証明されたのである。

非科学的なテレビ番組

トコちゃんベルトを愛用してくださっている方々にとっては「そんなこと当たり前。何を今さら」と思われることでしょうが、数字がなければ「エビデンスがない」と信用してもらえないのが医学の世界である。テレビ局などの報道機関も同様である。
ご記憶の方もおられると思うが、ごく最近にも、あるテレビ番組内で「そもそも構造上、内臓は下垂するなんてことはあり得ません」と言い切られていた。これを聞いて唖然とされた方も多かったことであろう。だったらなぜ胃下垂・遊走腎・子宮脱・膀胱下垂などという病気があるのか? そのような“学説” を唱えた医師の氏名も明らかにすることなく、そのような内容を放送することは放送倫理上許されることなのか?

この番組で恥骨結合の緩み具合をエコーで検査された医師のコメントは、切り抜きされて勝手に編集され、あたかも骨盤健康法を全面否定しているかのような内容になっていた。この医師はこれまで、骨盤の弛緩が早産や排尿障害と関連があることを発表されているのに、その研究成果をも否定する番組であった。
しかし、こういった放送局に抗議するにはそれなりの証拠が必要である。今回の齋藤さんの研究は、こういったずさんで非科学的な番組に、堂々と異議を唱えることのできる根拠となるものである。

様々な不思議を数字に

私が毎日働く中で「不思議」と思うことは実に多い。最も強く思うのは、低位胎盤・前置胎盤の増加である。大病院で働く助産師に尋ねても「増えている」と全員が答える。また、私が学生時代「前置胎盤は初妊初産の人にはない」と習い、その通りだと長年思ってきた。ところが私がそう語ると「えっ、そうですか? 初産婦と経産婦では差がないと思います」とほとんどの助産師は断言する。どうしてこんなに変わったのか?

もう一つは内子宮口の尖りである。内子宮口がU字状に開大すれば切迫早産として入院加療となることは、今の日本では一般的のようである。私のサロンに来られる妊婦さんにはエコー写真を持って来てもらうのだが、それらを見ると、内子宮口が嘴状や三角に開大している画像がしばしば見られる。しかし、医師からは「異常なし」と言われたと語る妊婦がほとんどである。これらはU字状開大の前段階で、決して順調とは言えないと私は思う。

エコー

「どこに正常と異常の線を引くのだろうか、医師によって随分と違うのでは?」と考えていた矢先、左のようなGSの写真に出会った。この人はこの写真の後、妊娠11週で流産し、これを含めて1年間に4回流産。習慣性流産の原因は精査しても不明だった。しかし、私はこのGSの尖りが気になった。そして、ある助産師にこの写真を見せたところ「私の病院の先生は、この程度でも流産の危険性が高いと妊婦さんに説明している」と語った。この程度のGS の尖りも問題視する医師もおられるのである。

妊娠前から骨盤輪が弛緩している人は、低位胎盤・前置胎盤になりやすく、妊娠後は内子宮口が開大しやすいのではないかと私は思う。ぜなら、低位胎盤や前置胎盤の人達の恥骨の上端を触診すると、骨盤輪の弛緩を示す大きな▼の凹みが触れることが多いからである。
合阪幸三先生(浜田病院) がこの▼の角度をエコーで数字にして、早産との関連を発表されているのだが、触診でもかなり正確に分かるので、皆さんもぜひ触診をしていただきたい。そして、これらの不思議と骨盤輪の弛緩とを数字にして発表していただきたい。それを皆様にお願いして、ご挨拶といたします。