第53回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART10

妊娠・分娩・産褥・新生児のトラブル
―骨盤ケアで脊柱も心も変化する―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1  妊娠に伴う腰背部痛・骨盤痛のメカニズム
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 リハビリテーション科学コース 理学療法士 梶原由布

演題2  妊婦の腰痛はマイナートラブルか?
自治医科大学 精神医学講座・佐野厚生総合病院 精神神経科 吉田勝也

風邪と腰痛、どちらもより万病の元?

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助産師 渡部 信子

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
助産師 渡部 信子


「風邪は万病の元」とは、いつ頃から言い伝えられているものか良くわからないが、風邪をひけば気管支炎や肺炎に進展することもあることは、多くの人が知っていることである。でも、それだけだったら「万病の元」とは言わないのではないだろうか? 風邪をひきやすい人は、あらゆる病気になりやすく、風邪を機に、いっきに悪化しやすいことを意味しているのではないだろうか。これはこれで言い得ていると思う。

しかし私は、整体を学び始めてからは、「風邪よりも腰痛の方が万病の元と言えるのでは?」と思うようになった。整体・カイロプラクティックの書物などには「骨格のゆがみを整えることで、代謝が良くなり、自然治癒力も働きやすくなる」と書かれている。

ところが腰痛や腰の定義は明確ではない。中学校の家庭科では腰回りとは臀部の最も大きいところ、胴周りとは臍あたりの胴体のくびれたところを採寸するようにと習う。骨盤は腰回りの中にあり、腰椎は胴回りの中にある。医学では骨盤と腰椎が腰痛を引き起こす部位とされているが、腰椎に問題がある痛みを腰痛、骨盤に問題がある痛みを骨盤痛としている人もあれば、どちらも腰痛とし、腰椎由来の腰痛・骨盤由来の腰痛としている人もある。

整体・カイロプラクティックでは「人間の体を家に例えるならば、脊柱は大黒柱、骨盤は土台」と考える。漢字では、腰という漢字は月( にくづきへん) に要と書く。上半身の重みを受け止めるのは骨盤、足からの衝撃を受け止めるのも骨盤であるから、全身の骨格の要は骨盤である。このことに異論を唱える人はいないであろう。

私は大学病院で働いている頃から「腰痛を訴える妊婦は、早産しやすく、胎児の成長も悪く、安産できず、産後の経過も良くない。それだけでなく、骨盤位・前置胎盤・腹痛・イレウス・水腎症などで入院してくる妊婦も、腰痛を併せ持っている」と感じていた。

大学病院を辞め、整体サロンを開いてからは「腰痛のためにサロンを訪れる人々のほとんどが、姿勢が悪く、骨格全体のバランスが悪く、妊娠分娩歴が悪く、頭痛や肩こり、冷えなども併せ持っている」ということに確信を持つようになった。また「腰痛と全身のマイナートラブルや病気とは、深い関連性がある。腰痛の原因となる骨盤や腰椎を安定させ、良く動けるようにし、神経・筋肉・内臓などがしっかり働くようにしなければ、人間は健康になれない」と考えるようになった。

かくいう私は、高校を卒業するまでは、風邪で学校を休んだことは一度もなかった。ところが、出産を重ねるうちに腰痛がひどくなり、同時に、頻繁に風邪をひくようになり、気管支炎まで起こすようになってしまった。さらには頭痛もひどくなっただけでなく、蕁麻疹・卵巣嚢腫・扁桃腺炎・耳鳴り・難聴・めまい・うつ…と様々な病気や症状に悩むようになった。

しかし、整体を学び始めてから、師匠に整体をしてもらうようになり、セルフケアに励むようになると、それらは一切現れなくなった。2002 年の1 月からセミナーと施術で全国行脚の生活となったが、これまでの12 年あまりの間、風邪などの病気でセミナーを欠講したことは一度もない。

でも、私は第2 胸椎がずれやすく、そのあたりが痛くなると必ず風邪気味となる。操体法などのセルフケアに励んで痛みが消えると、速やかに症状は改善する。しかし、いくら頑張っても痛みが消えない時は風邪もスッキリしない。そんな時は誰かに第2 胸椎を整えてもらうまで続く。

また、腰痛や恥骨の痛みのためにサロンに通って、症状改善した女性から「毎月風邪をひいて熱を出していたのに、ここに通い始めてから風邪をひかなくなったんですが、体のゆがみが整ったことと関係あるんですか?」との質問を受けることがしばしばある。そんなことを知っているサロンの常連さんは「風邪がスッキリ治らない」との主訴で施術に来られる。今日の最初の人もそうで、施術後「スッキリしました」と帰って行かれた。

風邪が治らないということは免疫力が低下した状態が続くことである。すると、様々な感染症を招きやすくなるだけでなく、安静時間が長くなることで運動量は減少し、代謝も低下する。悪い姿勢で寝ていれば骨格のバランスはいっそう悪化する。するとさらに免疫力が低下する…つまり「風邪は万病の元」ということわざは、とても科学的であると言える。

現代の日本では、風邪をひいただけで医師の診察を受けに行って薬をほしがる人が多く、薬を飲んで症状さえ消えれば「治った。あの薬はよく効いた」と喜ぶ人が多い。しかし、発熱や咳など、様々な症状は生体防御反応なのだから、それを抑え込んでしまったら、かえってその人の持つ免疫力を低下させてしまうため、逆効果である。薬を飲んで良くなったと感じるのは、その間に自己免疫力が少しずつ働いて、それで良くなったのであるが、まだまだ勘違いをしている人が多い。

腰痛も湿布や飲み薬で痛みを散らし運動をせずにいると、骨盤周囲の筋肉は弱り靭帯も緩む。すると内臓を支える力は低下し、内臓は下垂しがちとなる。腰椎とそれを支える靭帯・筋肉・神経の機能も低下する。すると、内臓の機能も低下し、便秘・腹痛・排尿障害・痔・冷えなど、様々 な症状が出現する。すると、免疫力も低下することは容易に推測され、命を脅かすような病気を招く原因になりかねない。

命にかかわるような大病にり患してしまってからサロンに来られる人は、決まって骨盤をはじめ骨格全体のバランスが極めて悪い。しかし、このことについて関心を示す内科医に、残念ながら私は未だ出会ったことがない。もちろんこんなことに関して学会発表もされていそうにない。なので、私がこんなことを書くと「エビデンスがない」と一喝されてしまうであろう。

現代の日本では、医学部でも看護などの医学関連の学部でも、骨盤をはじめとする骨格のゆがみが人間の心身の健康に害を及ぼすことについて、学ぶことはほとんどない。でも、それでいいはずがない。もっと医学・医療は変わらなければならないと、私はまだ漠然とではあるが思っている。

「風邪も腰痛も、体調悪化の黄色信号」と言える。できるだけ軽微なうちに、骨格のバランスを整え、栄養と安静を摂って、自然治癒力を高められるようなセルフケアの普及が必要である。そうして健康な国民が増えなければ、医療崩壊を食い止めることはできないと私は思う。

今回のランチョンセミナーが、皆様や妊産婦さんたちの自然治癒力を高めるのに少しでもお役に立ちますよう、心から願ってごあいさつといたします。