第25回日本助産学会学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART6

妊娠・分娩・産褥・新生児期のトラブル
―助産師のケアで早産を減らせる!―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題1 当院における双胎妊婦への骨盤ケアの取り組みと宮崎県における骨盤ケアの現状
医療法人同心会 古賀総合病院周産期母子センター師長 助産師 田中 優子

演題2 切迫早産妊婦に対する骨盤輪支持の有効性の検討
奈良県立奈良病院 主任 助産師 前田 智子

統計は真実を語るか?

LINEで送る
助産師 渡部 信子

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
助産師 渡部 信子


私が看護学生時代、統計学者としても高名な蜷川虎三京都府知事の話を聞いた時だった。 「統計は真実を語らず、真実を語るのは理論である!」との蜷川さんの熱弁に、私は強烈な衝撃を受けた。 それまでも私は教科書に書かれている様々な数字を「これはいつ、どうやって調べて、この数字を出したんやろ?」と疑問を持ちながら見つめ、 教官にしばしば質問していた。しかし、納得できる解答が返ってくることは少なかった。 そんな私は何年も経ってから「あんたはほんまに憎たらしい質問をしたなぁ」と教官から言われたものだ。

32歳の時、私の希望で小児科外来に替わった。そこで当時のS助教授に「あんたは小児科を誰に習ったんや?」と尋ねられ、 「W先生です」と答えたところ、「W君か、W君からは、看護学生にどう答えたらいいかと、よう相談されたな~、 『看護学生は思いもよらない質問をする。教科書に描かれている新生児の頭は、産科では細長く小児科では丸い。 頭周囲などの平均計測値も小児科と産科とでは違う。これは生後何時間で測ったものか?』と、わしもどう答えていいか分からんかった」と。 私は「その質問をしたのは私です!」と、二人で大笑いしたものだった。 質問してから13年も経っているのに、担当でない先生にまで私の質問を覚えてもらっていたことに感激した。

この疑問は今も私は解決できない。初産婦から当時生まれた子の頭は、細長くて退院時でもまだ細長かった。 何日経ったら小児科の教科書に書いてあるような丸い頭になるのか? 28日過ぎれば新生児とは言えない…。 今も様々な平均測定値や統計の数字を見るたびに「本当にこれは真実を語っているか?」と見つめてしまうのが私の癖である。 それに、何十年も前と現代では、骨盤外計測値・新生児の頭の計測値もかなり変化しているはず。分娩時の出血量も各施設で平均値が違う。 どの範囲を少量・中等量・大量としているのか? 数字に付きまとう私の疑問は大きくなる一方である。

今回のお二人もたくさんの数字を出された。前田さんは切迫早産妊婦に骨盤輪支持を導入した前後の変化について調査し、 骨盤輪支持の有効性を示された。7年間の実践とデータ分析は「素晴らしい」の一言に尽きる。 統計処理にあたってはNICUの小児科医に多大なご協力をいただいたとのこと。 こうして小児科医からも骨盤輪支持と早産との関連について、関心と協力を得られるようになってきたことに、胸が熱くなる。 この場を借りて感謝申し上げます。

しかし、ここで示された数字は、あくまでも県立奈良病院の数字である。 日本各地の病院で同じような数字が出されてこそ「骨盤輪支持は早産予防に有効である」と全ての医師・助産師に認知されるようになるのである。 前田さんのような研究は、どんな病院でもすぐにできるものではないが、田中さんの報告内容なら、どんな施設のどんな助産師でも、努力と意欲次第できっとできる。たくさんの実践と報告の積み重ねにより、骨盤輪支持は普遍的なものとなり、骨盤輪支持が早産予防に有効であることに誰も異議を唱えることがなくなると思う。それが不動のエビデンスとなり、理論となっていくのであろう。

今日のこのセミナーが、早産減少につながることを願って、ご挨拶といたします。