第27回日本助産学会学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART11

妊娠・分娩・産褥・新生児期のトラブル
―妊娠中の不安を解消して、充実のマタニティライフを―

目次

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長 渡部 信子

座長・演者経歴

演題 充実したマタニティライフのために:2つの「不安」解消ツール
自治医科大学 総合周産期母子医療センター 講師 桑田 知之

胎児危機を察知し、すり抜けるスリルを楽しみつつ

LINEで送る
助産師 渡部 信子

コーディネーター・座長からのごあいさつ
トコ・カイロプラクティック学院 学院長
助産師 渡部 信子


私が京大病院に就職してちょうど10年経った時、小児科外来勤務を希望し、願い叶って配転された。するとそこで、小児科医から「あんたは助産婦で産科で働いとったんやってな~。ようあんな怖いところで働けるわ~」と言われた。

まさに言い得ているが、そう言われて私は「だからこそスリルがあって面白いんですよ~」などと答えたと記憶している。その先生は「学生時代に分娩見学をした時、普通にお産を終えた産婦が、その後に続く大出血でそのまま亡くなった」と語った。

幸い私は、母体死亡には一度も出会うことはなかったが、怖い思いをしたことは何度もある。その多くは、今は「胎児機能不全」と言われるようになった胎児の危機である。大学病院では、様々な重篤な疾患を合併した妊産婦を看た。様々な理由から「ギリギリセーフ」の状態で、帝王切開で赤ちゃんが生まれることも多かった。原因不明の胎内死亡もあった。

大学病院を退職して整体サロンを開業しても、そのスリルは変わらない。妊娠33週まで私が施術した妊婦が、里帰りした後、妊娠36週で胎内死亡したことがあった。その人は、IUGRだったことは間違いないのだが、原因については、その後の様々な検査でも解明されなかった。

トラウベで臍帯雑音聴取

それを機に、私は次のような場合、10カウント検査法を勧めている。1.胎児が胎齢に対して小さい 2.子宮の硬さが解消しない 3.羊水が少ない 4.過去に死産の経験がある 5.トラウベで臍帯雑音聴取 などである。

1~4までは助産師なら当然と思うであろうが、5は「えっ?」と思う人が多いのではないだろうか? 私は看護学生時代の産科病棟実習時、当時の主任助産婦から臨床講義を受け、その時に「トラウベで臍帯雑音が聞こえる場合は、胎児が危険な状態である」と習った。しかし、看護学生時代から退職するまで、トラウベで臍帯雑音を聞いたことがなかった。多忙にかまけ、トラウベで聴取しようとしなかったせいもあると思うが…。

退職し開業してからは、妊娠36週に入った妊婦さんの児心音聴取は、必ずトラウベを使っている。ある時、サロンを訪れた脊柱側弯をもつ妊婦さんをトラウベで聴取すると、聞いたことのない音が聞こえた。その瞬間「これが臍帯雑音や!」と身体が凍りついた。そんな私の心も知らずその妊婦さんは「あの~、グレーゾーンって何ですか~? 私、お産する予定のクリニックの先生に『グレーゾーンだから、大きな病院に変わってくれ』と言われたんですけど~」と。

骨盤ケアで改善!

「そうなんや! 胎盤機能が低下し動脈の抵抗が高まると、雑音が生じるんや!」と、私はひらめき、すぐに骨盤高位で膝を左右に揺らすよう指導した。その後、全身の凝りを緩和させるようにケアすると、臍帯雑音は消えた。不思議だった。結局その人はグレーゾーンから脱却し、また自宅に近いクリニックに戻って分娩することができた。

それから、年ごとに臍帯雑音が聞こえる妊婦が増え、昨年は一日に二人も聞こえる日があった。でも、骨盤高位で体操をし、10カウント検査法を続けることにより、胎児が危機に瀕したという話はまだ聞いたことがない。

2005年、浜松医科大学の金山教授の講演を聞く機会があった。その時、先生は「骨盤内鬱血が胎盤鬱血を引き起こし、胎盤の育ちが悪くなる。助産師さんには、ぜひとも妊娠12週から、胎盤をしっかり育てるための保健指導をしてほしい」と話された。これを聞いて、私は、私が提唱している骨盤ケアは、金山先生の講演内容に合致していると、確信を持つようになった。

近年の私は、妊娠12週と言わず、妊娠前からも骨盤内の鬱血が予測される女性には、骨盤ケアをして、妊娠しやすい体を作るよう指導している。

私の診療セット

妊活でサロンを訪れる人々のほとんどが、姿勢が悪く、骨格全体のバランスが悪く、腰痛・頭痛・肩こり・冷えなども併せ持っている。一人の命を胎内に宿し、世の中に送り出すことは大変な体力を要することである。妊活中の女性には、そのことを理解してほしいと願っている。

今も私は、臍帯雑音が聞こえるたびに、身体が凍りつく。でも、臍帯雑音が消え、元気な赤ちゃんを抱いて来られた姿を見ると「よしっ、私もまだまだ捨てたもんではない」と笑みがこぼれる。胎児危機を察知し、すり抜けるスリルを楽しみつつ生きる毎日は、実に楽しい。

今回は、自治医科大学の桑田先生にお願いし、(有)青葉のランチョンセミナーでは初めて産婦人科医に講演していただけることとなった。桑田先生のように、周産期医療に熱心で、しかも、妊婦の全身に視線を配り、妊産婦の身体を整え、不安を抱くことなく健康な母子の育成に尽力されている産婦人科医は本当に少ないと感じる。もっともっと増えてほしいものである。

今回のランチョンセミナーが、助産師の皆さんの診断能力、保健指導能力の向上に、少しでもお役に立ちますよう、心から願ってごあいさつといたします。