第56回日本母性衛生学会総会・学術集会
ランチョンセミナー 骨盤ケアで改善! PART15

妊娠・分娩・産褥・新生児期のトラブル
―骨盤ケアで胎勢も、新生児の姿勢・睡眠も変わる―

目次

ごあいさつ

コーディネーター・座長経歴、演者経歴

演題 寝ない子を抱いたままの育児体験と、
感覚統合運動から知った胎内環境・育児環境の重要性

助産師・子ども身体運動発達指導士 新沼 映子

演題 寝ない子を抱いたままの育児体験と、
感覚統合運動から知った胎内環境・育児環境の重要性

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トコちゃんベルトアドバイザー・まるまる育児アドバイザー 助産師・子ども身体運動発達指導士 新沼 映子

トコちゃんベルトアドバイザー
まるまる育児アドバイザー
助産師・子ども身体運動発達指導士
新沼 映子

Ⅰ. はじめに

私は助産師として大学病院で9年間の在職中、2人の出産子育てをし、東日本大震災後に退職した。育児と家事に1年間専念した後、3年前から市の乳幼児健診に、2年半前から新生児訪問にも従事し始め、2年前から、平日の午前中のみ週4~5日、入院取り扱いのないクリニックで勤務している。

その傍ら、2年前から発達の凹凸がある子どもたちへの「感覚統合エクササイズ」について学び、今は「子ども身体運動発達指導士」として、活動を行っている。私がなぜ、この分野に関心を持ち、活動するようになったか、また、私が妊娠中や子育て期に知りたかったことや、妊娠・子育て真っ最中の人達に、ぜひ知っていただきたいと思うことについて述べる。

Ⅱ. 私の妊娠・出産、抱いたままの子育て

第1子の妊娠は、初期より腰痛・頻尿・こむら返り・腹部緊満感などがあり、トコちゃんベルトⅡを使用して、何とか過ごしていた。妊娠40週で出産し、児の出生時体重は2792g。身長165cmある私の体格としては、小さい児であった。

出生直後からよく泣き、頻回授乳に励み、体重増加は曲線に沿ってまずまず良好だったにも関わらず、黄疸は強く、光線療法を受けるほどではなかったが、生後2か月まで「要観察」で、2週間おきに通院した。股関節の開排も固めで、2か月のときに整形外科受診を勧められて受診したが、「経過観察」とされ、3か月まで2度受診した。

音に敏感で眠りが浅く、ベッドに寝かせようとすると起きてしまうため、1日中ほとんど抱いたまま過ごしていた。「寝る子は育つ」の諺が頭の隅にずっとちらつき、「こんなに寝ない子は、果たして健康に育つのだろうか?」との不安を抱きながら、育児のスタートを切った。

5か月頃になると少し啼泣は治まったが、ベッドに寝かせると背面が硬いためか、仰向けのまま足の力だけで頭方向に移動し始めた。6か月頃に寝返りしたものの、滑らかさがなく、反り返った勢いでバタンと倒れるように寝返っていた。8か月で膝這い、9か月で自力座位ができるようになったが、「発達が少しゆっくりしているのでは?」と感じながら、疲れた体と心に鞭打って、育児に励んでいた。

第1子は抱っこ以外は泣き、車でも泣き続けるため、移動はほとんど徒歩か電車で、毎日1~2時間散歩をしていた。また、月経が近くなる度に腰痛があり、トコちゃんベルトⅠ・Ⅱを使い分けていた。

第2子は妊娠39週で出産し、児の出生時体重は2648g。第1子ほどは泣かなかったが、「置いたら泣く」「泣かれるのが怖い」と思い、やはり抱いたままの育児だった。

Ⅲ. 乳幼児健診・新生児訪問に従事し始めて感じたこと

3年前から市の乳幼児健診に従事し、2年半前から新生児訪問に従事するようになり、病院勤務時代には見えなかった多くのことが見えるようになった。

新生児訪問は1か月に4~9件訪問しており、生後30日~45日での訪問が多く、訪問時間は1~2時間。体重測定・健診案内・保健指導・悩み相談などをしている。悩み相談では、「抱っこしているといいが、置くと泣くので休めない」「寝ていても“うなる”ので気になる」「便秘」「向き癖がある」「反り返り」などが多い。

児が激しく泣いているにも関わらず、「特に困っていることはありません」と返答し、「家事や上の子の相手をするときには、仕方ないので、赤ちゃんは泣かせたままにしています」などと、淡々と話す母もいる。また、向き癖や頭のゆがみがあっても、気づいていなかったり、新生児訪問時に「初めて我が子の頭の形を気にした」と話す母も多い。

エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)で9点以上の場合は、再度家庭訪問をすることになっていて、再訪問となるケースが月に1~3件ある。EPDSが高得点となるケースは、家族関係で悩んでいるケースもあるが、「赤ちゃんが寝てくれないため、自分の時間が取れない」「上の子の世話をする時間が取れない」との声が多い。

Ⅳ. 産婦人科クリニックで妊婦健診を担当し始めて感じたこと

2年前から、週4~5日、平日の午前中に入院取り扱いのないクリニックで、妊娠初期~32週までの妊婦健診を担当している。当クリニックに通院している妊婦は仕事に就いているか、子育てのために自宅にいるかのどちらかで、初産婦で働いていない妊婦はほとんどいない。

私は、1日3~5人を担当しているが、胎嚢が丸くない人が殆どである。そのため、妊娠初期から不良姿勢で長時間スマートフォンを使用することや、ゴムで腹部を圧迫するような着衣を避けるように指導することが不可欠である。それでも、出血などの切迫早産兆候で自宅安静の指示が出る人が月に6~8人あり、月30人程度しか健診を行っていない中で、1/5~1/4ほどを占めている。

マイナートラブルと言われる訴えがあまりにも多く、妊娠初期から頻尿・便秘・鼠径部痛・腰痛(片側のみが多い)・頭痛の訴えが目立つ。これら以外に経産婦では、初期から尿漏れの相談もある。

妊娠15週以降の妊婦健診時は仰臥位で経腹超音波検査を行っているが、経産婦では妊娠10週台から、「腰上げが辛い」「腰が上がらない」「膝の曲げ伸ばしが辛い」などの訴えがある。初産婦でも妊娠28週頃から、仰臥位での腰上げができなくなる人が多い。

大学病院に勤務していた7~8年ほど前と比べて、尖腹や腹直筋離開の妊婦、それに伴う骨盤位や、胎勢不良が、明らかに多くなったと感じる。

Ⅴ. トコ企画セミナーの受講動機と、受講して分かったこと

従来から行っていた保健指導では、腰痛などのマイナートラブルはあまり改善が見られず、「メンテ“力”upセミナーを受講すれば伝えられることが変わるのでは?」と考え、1年前に受講した。受講するまでは児が泣いていても、その理由が私には全くわからなかった。母の話を聞いて帰って来るだけの新生児訪問に、無力感を感じ、「このままではいけない」と思い、新生児ケアセミナーや赤ちゃん発達応援セミナーを受講した。

これらのセミナーを受講し、私の妊娠・出産・子育てを振り返ると、さまざまなことが思い当たるようになった。まずは、私の体。脊柱のS字状弯曲が弱くゆがみもあり、狭い胸郭と内臓下垂。妊娠すると、胎嚢は細なす型で、その後も胎児の周りの羊水量は少ない状態が続いていた。当時は胎嚢の超音波写真を見ても、その形状に視線を注ぐことすらしなかった。子育てでは、手を引いて歩かせる、平らな場所ばかり歩かせるなど、必要のない手出しをたくさんしていたと反省させられた。

Ⅵ. 我が子に見られる気になる症状が、感覚遊び・運動遊びで改善

1. 感覚遊び・運動遊びとの出会い

図1 発達と学習の階層(発達支援コーチの初級講座テキストより)

図1 発達と学習の階層(発達支援コーチの初級講座テキストより)

1年半前、新生児訪問や乳幼児健診従事者対象に行われる研修会で、「感覚統合を促すための遊びと運動」について学んだ(資料1)*1。このときに、「原始反射が消失すべき時期を越えて残っていると、自分の意思と関係なく、反射が起こってしまうため、その場の状況に不適切な行動になる」「遊ばせながら不要になった原始反射が現れなくなることを促す必要がある」と学んだ(図1)*1)。

資料1 『発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし適応力を育てよう1』木村順より

研修会で紹介された子どもの具体的症状例、「夜尿」「暗い場所を極端に怖がる」「言葉よりも手がでてしまう(衝動的に行動してしまう)」「姿勢が悪い」「箸が上手に使えない」「文字を書くときに筆圧が強すぎるか弱すぎる」「家具や人によくぶつかる」「癇癪をおこす」「疲れやすい」などが、当時年長であった我が子に「まさしく当てはまる!」と衝撃を受け、勧められたエクササイズに取り組み始めた。

2.感覚遊び・運動遊び(エクササイズ)の実際

私が子どもに行ったことや、私の感想や、それを行った前後の子どもの変化を一覧表にした。

感覚遊び・運動遊び(エクササイズ)の実際

Ⅶ. まるまる育児を学んで、考えるようになったこと

メンテ“力”upセミナーや、感覚統合を促すための遊びと運動の研修会を受け、「胎児期や乳幼児期の姿勢が、その後の発達に影響を与えるのではないだろうか?」「妊娠期に胎内環境を整えられるようになりたい」と思うようになった。

感覚遊び・運動遊びを行うことで、その場で改善したように見えても、効果が長続きせず、子育て中の私は随分と悩んだ。しかし、乳幼児期に適切な関わりをもっていれば、子どもも私も悩むことはなかったのではと思う。感覚統合を促す遊びの順序が、乳幼児の発達の順序に沿っているように感じた私は、乳幼児の発達についての知識が不足していると痛感し、「さらに学びたい!」と、まるまる育児アドバイザーを目指すようになった。

新生児ケアセミナー・赤ちゃん発達応援セミナー・まるまる育児アドバイザー養成セミナーと受け進むに従って、私が新生児訪問で出会う母子の様子も変わってきた。母からよく聞かれる「便秘」や「赤ちゃんがよく“うなる”」という訴えは、抱き方、寝かせ方を変えることですぐに改善するため、「もっと早く知りたかった」「なんで病院で教えてくれないんでしょう?」という言葉とともに、「お母さん知らなかったんだ。ほんとにごめんね」などと、子どもに語りかける様子が見られるようになった。

EPDS 9点以上だと再訪問の対象となる。再訪問時、「寝てくれるようになった」「泣かれてもどうしたらいいかわかるから、楽になった」「お父さんの抱っこでも泣き止むようになった」「家事などの間、本当は泣かせていることに罪悪感があった。機嫌よく過ごしてくれるようになって、ほっとしている」「上の子と遊んであげられる時間がとれるようになって、上の子も落ち着いてきた」などの言葉が聞かれるようになり、点数も下がっている。

資料2 “えずこ”とは

資料2 “えずこ”とは

しかし、向き癖と反り返りで全身が固くなり、短時間のケアでは改善が見られないケースもある。1ヶ月健診で向き癖を指摘されるケースもあるが、具体的な改善のための指導がなされていないために、悩んでいる母もいる。産後の母は新しいことが覚えられず、何度説明しても理解してもらえないこともある。母が「まるまる抱っこをやってみたい」と思っても、祖父母から「苦しそう」などと言われ、実践できないこともある。反対に、訪問先の祖父母が“えずこ”を知っていて、“えずこ”について教えてもらったこともあり(資料2)、協力的なケースもある。

Ⅷ. 現在の取り組み

1.妊婦・新生児・乳児を対象に

新生児訪問の頃は、母は新しい情報を吸収できないことが多い。「もっと早く知りたかった」との声が多いため、まるまる抱っこ・まるまるねんねについて、妊娠中や産後早期に伝えられる環境を作りたいと考えるようになり、1,2の取り組みをしている。

2.幼児・学童を対象に

今の日本には、「静かにしなければならない」「ちゃんとしなければならない」という場所がとても多く、子どもたちが自由な発想で、思う存分遊べる場所が少ない。そのため、時間を決めてでも、周囲の目を気にすることなく、安心して思いっきり遊べる場所が、子どもにとっても親にとっても必要とされていると感じる。

そのため、「他のお子様とトラブルになる」「周りの親御さんの目が気になって、一般の遊び場では参加しにくい」などの悩みを持っている親向けに、任意団体が「放課後フリースペース」を開催し、「感覚遊び・運動遊びの活動」を行っている。私はこの活動にボランティア参加し、感覚遊び・運動遊びを子どもたちに伝え、一緒にしている。

このフリースペースに参加する母も、最初は「~してはダメ」と子どもを叱責することが多いが、子どもは気が済むまで遊ぶと、攻撃的な面がなくなり、穏やかになる。子どもと遊びながら感覚統合を進めていくと、困っている症状が徐々に改善されていき、それがわかると、母もリラックスできるようになる。反対に、恥ずかしがって、部屋の隅でじっとしていた子や、母に隠れていた子が、母から離れ笑顔で遊ぶようになる。

Ⅸ. おわりに

図2 丸くないGS、両膝関節伸展の胎勢

図2 丸くないGS、両膝関節伸展の胎勢

近年増加傾向にあると言われている子どもの発達に悩みを持つ親が、子どもと遊びながら感覚統合を進めていける場所が必要である。子どもがやりたいことに寄り添い、親がリラックスできると、子どもの表情も穏やかになり、発達も促されてゆくと感じる。

しかし、そのような悩みを抱えずにすむよう、我々助産師が妊産婦に関わることができるなら、より理想的であると思える。妊娠中から胎内環境を整えることが大切だと思うが、妊婦健診を担当して、胎位・胎勢が悪く、胎児がそうならざるを得ないいびつな子宮や、姿勢の悪い妊婦が多いのが気になる(図2)。妊娠28週以降は骨盤位は異常として、体操や骨盤ケアを行うことで頭位になるが、体操を継続して行わないためか、また骨盤位に戻ってしまうケースも少なくない。

資料3「第2次みやぎ21健康プラン」

宮城県は平成20年から始まった特定健診(メタボ健診)の結果…「メタボリックシンドローム該当者及び予備群」の割合が、5年連続全国ワースト2位となりました。平成25年に策定された「第2次みやぎ21健康プラン」では、「歩こう!あと15分」「減塩!あと3g」「めざせ!受動喫煙ゼロ」を重点目標に掲げています。(宮城県公式ウェブサイトより)

宮城県では、日常の移動手段は車の人が多い。歩いたり体操をする習慣がない人がほとんどで、足腰の筋肉が弱い人が多い。片側のみの腰痛を強く訴える人は、徒歩5分程度の距離も歩くことなく車に乗る人であったことからも、骨盤ケアの充実を図るとともに、「歩こう!あと15分」を、全妊婦が目指せるよう、取り組むことが大切であろう(資料3)。

図3  胎児と乳児の発達の関係

図3 胎児と乳児の発達の関係

妊娠15週頃には指・手しゃぶりが、25週頃には手で足を持ち遊ぶなどの動きが見られる。胎児期に見られた行動が、出生後は一時的に見られなくなり、乳児期では再び順に見られるようになる。

新生児訪問をしていて、向き癖や反り返り、泣き止まず、寝てくれないなどの理由で、育児に疲れている母が多い。妊娠中から胎内環境を整えるよう骨盤ケアに励めば、胎児はのびのびと動いたりゆっくり眠ったりすることができ、出生後の成長・発達にも良い影響を与えるのではと考えられる(図2,3)*2。児を丁寧に扱う育児技術の普及も大切であるが、産後間もない母は新しいことを吸収しづらいため、妊娠中のケアや指導が大切である。

最後に、私のように妊娠期からマイナートラブルに悩み、寝ない子どもを抱きながら辛い子育てをし、子どもの発達に悩む母が、1人でも減るよう、私の経験が少しでも役立つことを願うばかりである。


参考文献

  • 『たのしく遊んで感覚統合 手づくりのあそび100』佐藤和美,かもがわ出版,2008
  • 『今なぜ発達行動学なのか-胎児期からの行動メカニズム-』小西行郎,加藤正晴,鍋倉淳一,診断と治療社,2013