トコちゃんベルトの広がり

1997年、トコちゃんベルトを製造販売し妊産婦の腰痛ケアを普及するために、有限会社青葉を設立した。トコちゃんベルト旧型完成からすでに2年がたとうとしていた。しかし、当時は、妊産婦の腰痛は「お腹に赤ちゃんがいるのだから仕方がない」「産めば治る」など、妊娠中や産後の腰痛をケアしようという考え方は理解されなかった。

しかし、かすかな灯りも点いた。ある整形外科の医師が、骨盤輪不安定症の患者に次々と紹介してくれたからだ。
※骨盤輪不安定症とは、お産の後や転ぶなどしてお尻を強く打ったときなどに、骨盤の恥骨結合という部分が大きく緩んで骨盤がグラグラになり、立ったり歩いたりすることが困難になる症状のことで、患者のほぼすべてが女性であった。

当時、骨盤輪不安定症という病名を知る整形外科医も少なく、治療の方法もプラスチックや革で作った装具で骨盤全体を固定していた。トコちゃんべルトを見た先生は「こんな柔なものでは骨盤は固定できないよ」と言いながら、患者に試した。すると、ベルトを着用した患者は、トコトコと歩きだした。お産の現場では、500~600人に一人くらいの割合で恥骨結合離開や恥骨骨折と診断される産後の女性がいることが分かった。お産直後から身動きできなくなって、赤ちゃんは他人任せで1~2ヶ月の入院を余儀なくされていた。

1999年、「妊娠と腰痛」という論文の中でトコちゃんベルトは「骨盤支持ベルト」として紹介された。トコちゃんベルトを購入した患者は、腰痛などで悩む知人などに紹介し、序々に病院などの施設で取扱いされるようになった。

トコちゃんベルト開発のときから注目してくれていたある大学の看護学科の先生は、大阪の病院の方々と産後の着用効果の研究に取り組み、1997年の日本母性衛生学会で産後の腰痛緩和や尿もれの改善、ウツのリスクを軽減するのに効果があると発表。この発表は2000年に論文でも発表された。